• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

ムギ類に特異的な澱粉粒が形成される機構とその変異の利用

研究課題

研究課題/領域番号 20K05970
研究機関岡山大学

研究代表者

松島 良  岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (80403476)

研究分担者 久野 裕  岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (70415454)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードオオムギ / 澱粉 / 胚乳 / 種子 / 育種 / アミロペクチン / 突然変異体
研究実績の概要

イネ科植物の胚乳における澱粉粒は、複粒型澱粉粒と単粒型澱粉粒に大別される。複粒型澱粉粒は複数の小さい澱粉粒子が集合して形成されるのに対して、単粒型澱粉粒は1つの澱粉粒子から形成される。重要作物であるオオムギやコムギの胚乳の澱粉粒は、大きさが大小の二極性を示す単粒型であることから、二極性単粒型澱粉粒と呼ばれている。本研究では、オオムギを研究材料に用いて、不明な点が多い二極性単粒型澱粉粒の形成機構について新しい知見を得る事と、新しい澱粉特性を持つオオムギ系統の作出という2つの目的で研究を進めている。昨年度までの研究では、澱粉粒簡便観察法を用いて遺伝学的なスクリーニングを行い、二極性単粒型澱粉粒の形や大きさに異常を示すオオムギ突然変異体の単離と解析を行なってきた。本年度は、得られた変異体の中で、複粒型澱粉粒を発達させる変異体3系統に注目して解析を進めた。この3系統では同じ遺伝子に塩基置換が起こっていることを明らかにし、原因遺伝子がコードするタンパク質に対する抗体を作成した。western blotの結果、上記の3系統の変異体では、このタンパク質が種子に蓄積していないことが分かった。さらに、この3系統とは異なる表現型を示す突然変異体と交配し、多重変異体を作出した。その結果、複粒型澱粉粒を発達させる変異を亢進する変異や抑圧する変異を見出すことができた。本年度には澱粉科学の分野ではもっとも権威がある国際学会で招待講演を行った。また、得られた系統の一部で、国際特許出願を行った。オオムギは、醸造用、飲料用、食用、飼料用に利用される多用途作物であり、すべての用途において澱粉特性、種子特性は重要形質である。作出したオオムギ系統の社会実装を目指して、オオムギ関連企業に対して説明会も行なった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、澱粉粒の形に注目してスクリーングを行い、新しい澱粉特性を示すオオムギ突然変異体を単離、解析を行い、澱粉粒の形成機構に関する新知見を得ることを目的としている。現在までに、澱粉粒の形状に異常を示す突然変異体を複数系統単離することに成功している。本年度は、種子における代謝産物を網羅的に調べるためのGC-MS解析を立ち上げることができている。この解析により、得られた多重変異体の中には、種子において野生型やシングル変異体よりも単糖類ならびに二糖類が高蓄積している系統がある事を明らかにしている。また、オオムギの室内世代促進栽培法の最適化を行なっており、かなり短期間で世代促進が可能になりつつある。多重変異体の作成が今後効率的に行えることが期待できる状況にある。

今後の研究の推進方策

立ち上げた解析系、栽培系を利用して突然変異体の評価を進め、順次学術論文に発表していくことを優先的に進める。また、新しい変異体に関しては、特許出願を行う予定である。オオムギは秋に播種し、春に収穫する作物であるが、本研究で行う突然変異体のスクリーニングは、完熟種子を使って行うため、季節を問わず実施することができる。単離した変異体を室内栽培系で栽培すれば、季節問わずに次世代における遺伝性の確認や戻し交配ができる。そのため、変異体のスクリーニングは時間の許す限り行う方針である。

次年度使用額が生じた理由

複数の学会、研究会への参加、共同研究打ち合わせ等を計画していたが、全てオンラインで代替したため、旅費の一部が残額となった。また、次年度の最初に導入したい設備品が生じたため、予算の一部を次年度に繰り越して使用する予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] Starch biosynthetic protein complex formation in rice ss2a be2b (+) double mutant differs from their parental single mutants2022

    • 著者名/発表者名
      Ida, T., Crofts, N., Miura, S., Matsushima, R. and Fujita,N.
    • 雑誌名

      J. Appl. Glycosci.

      巻: on line ページ: on line

    • DOI

      10.5458/jag.jag.JAG-2021_0015

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mutation in BEIIb mitigates the negative effect of the mutation in ISA1 on grain filling and amyloplast formation in rice2022

    • 著者名/発表者名
      Nagamatsu S, Wada T, Matsushima R, Fujita N, Miura S, Crofts N, Hosaka Y, Yamaguchi O, Kumamaru T.
    • 雑誌名

      Plant Mol Biol.

      巻: 108 ページ: 497-512

    • DOI

      10.1007/s11103-022-01242-3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Structure and Properties of Starch in Rice Double Mutants Lacking Starch Synthase (SS) IIa and Starch Branching Enzyme (BE) IIb2021

    • 著者名/発表者名
      Ida, T., Crofts, N., Miura, S., Matsushima, R. and Fujita, N.
    • 雑誌名

      J. Appl. Glycosci.

      巻: 68 ページ: 31-39

    • DOI

      10.5458/jag.jag.JAG-2021_0002

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 澱粉粒の形状多様性とオオムギの種子澱粉改変に向けての取り組み2022

    • 著者名/発表者名
      松島良
    • 学会等名
      第2回植物研究拠点アライアンス公開シンポジウム
  • [学会発表] 種子中の澱粉量が減少し、糖を高蓄積するオオムギ変異体の作出2022

    • 著者名/発表者名
      松島良・久野裕・Ivan Galis ・竹中悠人・追留那緒子・石水毅・藤田直子・佐藤和広
    • 学会等名
      第141回 日本育種学会講演会
  • [学会発表] Cytological studies of starch grain morphologies of cereals - Towards the understanding of the morphological diversity of starch grains.2021

    • 著者名/発表者名
      Matsushima, R.
    • 学会等名
      2021 Starch Round Table
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] スターチシンターゼ(SS)IIaと枝作り酵素(BE)IIbの二重変異体米が登熟胚乳で形成する澱粉生合成関連酵素の超高分子量タンパク質複合体の解析2021

    • 著者名/発表者名
      井田圭美・クロフツ尚子・三浦聡子・保坂優子・松島 良・藤田直子
    • 学会等名
      日本応用糖質科学会2021年度大会
  • [学会発表] オオムギうどんこ病菌による宿主表皮細胞プラスチド内在デンプンの分解メカニズムの解析2021

    • 著者名/発表者名
      在間玄香・井上 博・久野 裕・松島 良・小林括平・山岡直人・中神弘史・八丈野孝
    • 学会等名
      第85回日本植物学会
  • [学会発表] 遺伝子改変能を付与した低澱粉オオムギ変異系統の開発2021

    • 著者名/発表者名
      久野裕・松島良・佐藤和広
    • 学会等名
      第16回 ムギ類研究会
  • [学会発表] 澱粉が減少し、糖が高蓄積するオオムギ変異体の単離2021

    • 著者名/発表者名
      松島良・久野裕・Ivan Galis・竹中悠人・追留那緒子・石水毅・藤田直子・佐藤和広
    • 学会等名
      第16回 ムギ類研究会
  • [学会発表] 澱粉蓄積量可変のオオムギの開発と機能性多糖の蓄積への応用2021

    • 著者名/発表者名
      松島良
    • 学会等名
      岡山大学新技術説明会
  • [産業財産権] イネ科植物及びその作製方法2021

    • 発明者名
      松島 良、久野 裕、佐藤 和広
    • 権利者名
      松島 良、久野 裕、佐藤 和広
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2021/036891
    • 外国

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi