研究課題/領域番号 |
20K05972
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
山口 夕 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 准教授 (60335487)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ダイズ / 生理活性ペプチド / グリセオリン / イソフラボン |
研究実績の概要 |
本研究ではダイズ8アミノ酸ペプチドGmPep914を過剰に発現させることにより、機能性成分であり、抗菌物質でもあるグリセオリンを高蓄積するダイズ系統の作出を目指していた。ダイズの形質転換方法としては子葉節にアグロバクテリウムを感染させる方法で行っていたが、本年度は胚軸を用いる方法についても行った。しかし、残念ながら選抜マーカー(グルホシネートアンモニウム)で生存できる再分化個体の取得には至っていない。 GmPep914過剰発現ダイズの作出がなかなか進まないため、本研究内で作成したダイズ培養細胞を用いて、引き続きペプチド投与によるイソフラボン類の蓄積量の変化についてHPLC-PDAを用いて解析した。本年度では、GmPep914とそのホモログであるGmPep890の10 uM以上の処理により、安定して24時間以内にグリセオリンの蓄積が起こることを明らかにした。グリセオリン標品を用いて定量したところ、10 uM24時間の処理により約200 mg/g (乾物重)のグリセオリンが蓄積することが分かった。一方、ダイズの主要なイソフラボンであるダイジン、マロニルゲニスチン、ダイゼイン、ゲニステインについては、GmPep914とそのホモログであるGmPep890を1 nMという低濃度で処理しても24時間で顕著に減少することが新たに分かった。これらの応答は、水処理やGmPep914の8番目のアミノ酸をアラニンに置換したペプチド(GmPep914Y8A)の処理では認められなかったため、これらの応答がGmpep914とGmPep890に特異的な応答であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ダイズの形質転換に使用する品種の変更や、アグロバクテリウムの感染組織の変更などを行ったものの、GmPep914過剰発現体の作出には至っていない。一方で、ダイズ培養細胞へのGmPep914投与によるグリセオリンの蓄積誘導に加えて、低濃度のGmPep914処理により短期間に顕著に主要なイソフラボン類の蓄積量が減少することが新たに明らかとなった。以上のことから、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
GmPep914過剰発現ダイズの作製については引き続き進めるとともに、ダイズ培養細胞を用いたグリセオリンの蓄積と他イソフラボン類の蓄積量減少について詳しく解析していく。これまでの結果は、ペプチド処理時間が24時間の1ポイントであったため、経時的な解析を進める。グリセオリン以外のイソフラボン類につては、定量的な解析を進めることにより、ペプチド処理によるグリセオリンを含むイソフラボン類の合成経路の変動について明らかにしていきたい。また、これまでに作製したGmPep914過剰発現用ベクターを利用して、ダイズ培養細胞の形質転換を行い、その効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究がスタート時にCOVID-19の感染拡大が起こり研究活動に制限が掛ったこと、作製予定だったダイズの形質転換体の作出が遅れていることから、全体的に研究が後ろ倒しとなっている。またそのために学会発表や論文発表ができていないため。 2025年度では、引き続きGmPep914過剰発現体の作出と培養細胞を用いたイソフラボン類の分析に必要な試薬類・器具を購入する。また、年度末には本研究の成果を学会で発表する予定である。
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