本研究は、巨大胚変異体(ge)に着目し、胚―胚乳間相互作用に関与すると考えられる胚盤組織の役割ならびに胚の巨大化を引き起こす胚側因子やそのシグナル伝達経路に関わる分子を特定することで胚の大きさを決定する分子機構を明らかにすることを目的として、以下の2つの解析を実施した。 1)胚-胚乳間相互作用における胚盤の役割 野生型、ge変異体を用いたLMD (Laser Microdissection)法による胚盤組織特異的に発現変動する遺伝子の特定を目指すため、LMD用の子房サンプリングを実施し、LMDによる切片からRNAを回収してRNA-seq解析を行った。得られた発現データの解析を行っているところである。また、2021年度実施したapd変異体の原因遺伝子を確定する目的で行った相補性試験やゲノム編集による結果から変異を見つけた遺伝子が原因であることが明らかとなった。 2)巨大胚系統を用いた胚巨大化要因の同定:巨大胚を促すGE遺伝子がコードするシトクロムP450タンパク質を介した代謝経路ならびにシグナル伝達経路を同定するため、巨大胚の表現型を抑圧するges1、ges2、ges3の胚発生過程における表現型解析を行った。また、ges1-ges3変異に着目して原因遺伝子の同定などを目指すために、NGS解析を実施し、網羅的に変異箇所を抽出した。それらのデータ解析からges1、ges2において原因となりうる候補変異部位を特定し、ゲノム編集系統や相補性試験を行った結果、ges1およびges2の原因遺伝子を特定することができた。また、変異部位が特定できていないges3、ges4、ges5に関して、NGS解析を実施し、変異箇所の抽出作業を行っているところである。
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