研究課題/領域番号 |
20K05976
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
間野 吉郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, ユニット長 (20355126)
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研究分担者 |
中園 幹生 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (70282697)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 通気組織 / テオシント / トウモロコシ / 耐湿性 / ストレス耐性 |
研究実績の概要 |
湛水によって植物の根系が低酸素状態になった際に、効率よく酸素を根端まで運ぶのに重要な役割を担うのが根の皮層部分に形成される空隙の「通気組織」である。これまでに、高い通気組織形成能を持つテオシント(トウモロコシの近縁種)を用いた遺伝解析において、第1染色体のbin1.06-1.07の領域に効果が大きい量的形質遺伝子座 (Quantitative Trait Locus, QTL) が座乗していることが明らかとなっている。本研究では、通気組織形成遺伝子の詳細マッピング、準同質遺伝子系統 (Near Isogenic Line, NIL) の作出、NILを用いた発現解析、さらには通気組織が環境ストレス耐性向上に及ぼす効果を検証することを目的とする。 今年度は、テオシントの通気組織形成遺伝子の詳細なマッピングに利用できるマーカーを探索するため、トウモロコシとテオシントの間でのSNPsマーカーによる多型解析を行った。その結果、候補領域の9.9 cM (約6 MB)の領域に149個のマーカーが得られた。また、トウモロコシの遺伝背景にテオシントのQTLのみを導入した高純度のNILを作成するために、候補領域で組換えを起こした系統を選抜するとともに、自殖により固定させたNILの候補となる15系統を作出した。 さらに、純度の高いNILを用いた発現解析を行う前段階として、トウモロコシに通気組織に関する複数のQTLを集積した系統AE91とトウモロコシを用いて、レーザーマイクロダイセクション法で根の皮層のみを単離し、通気組織形成過程において皮層で発現する遺伝子の網羅的発現解析(RNA-Seq)を行った。現在得られたデータの解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに進んでおり、第1染色体の通気組織形成遺伝子の候補領域の様々な個所で組換えを起こしている系統を作出するとともに、通気組織形成遺伝子の詳細マッピングに利用できるマーカーを得ることができた。また、純度の高いNILを用いた発現解析を行う前段階として、トウモロコシに通気組織に関する複数のQTLを集積した系統AE91とトウモロコシを用いて、通気組織形成過程において皮層で発現する遺伝子の網羅的発現解析(RNA-Seq)を行い現在データの解析中である。以上のことから、おおむね、研究計画通りに本研究が順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 候補領域の様々な位置で組換えを起こしている系統の通気組織形成能を検定して、通気組織形成遺伝子の位置を特定するとともに、挿入されたテオシントの染色体断片が短いものを選抜して純度の高い準同質遺伝子系統(NIL)を作成する。また、純度の高いNILとトウモロコシを用いて、根の皮層で発現する遺伝子の網羅的発現解析を行うとともにqRT-PCRによる詳細な遺伝子発現解析を行う。 (2) 候補領域のゲノムDNAを持つBACクローンを選抜するとともにその塩基配列を決定して、候補領域内に座乗する遺伝子を同定し、トウモロコシとテオシント間で塩基配列に多型のある遺伝子を特定する。また、遺伝子発現解析のデータを用いて、特定した候補遺伝子の皮層における遺伝子発現を確認し、トウモロコシ、NIL、テオシントの根を用いたqRT-PCRにより、系統間での遺伝子発現量・パターンの違いを調査する。 (3) 純度の高いNILおよびトウモロコシの耐湿性および乾燥耐性、低リン耐性を評価して種々のストレス条件下での通気組織の生理機構を明らかにするとともに、マルチストレス耐性トウモロコシ品種の育成について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、研究費を効率的に使用したため残額が生じた。これについては次年度分に合算して、物品と賃金に使用する予定である。
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