研究課題
本研究では『マイクロバイオーム解析』と『植物組織内バクテリア局在可視化』を両輪に、イネやトマトの根組織内において『植物の生育状況』と『バクテリア組織内局在』が連関しているバクテリアを探索・同定し、この相互作用に関係する植物側受容因子を遺伝学的に精査することを目的としている。2020年度は、イネに関しては、根組織内のバクテリアのマイクロバイオーム解析結果を「R」を用いて統合的に判断し、生育状況の差によって有意に存在量に違いが出たバクテリア(1科、2属、1種)をエンドファイト候補として選抜し、それらを特異的に検出できる16S rDNAの特異的primerを「Primer-BLAST」を用いて設計した。条件などの試行錯誤の結果、特異的なPCR産物を得ることができ、PCR産物の塩基配列の確認も行った。また、上記研究に関連して、新たに1属のプローブを作成し、イネ根組織内での局在をバクテリアFISH解析によって明らかにした。研究協力者(マレーシア・Rahman教授)とは、新型コロナウイルスの影響により、出張による相互の往来は断念し、Zoomなどを用いてオンラインで議論を行った。その上で、日本側のデータをマレーシア側で再解析してもらうことが進行中であり、それをもとに、日本側のバクテリアFISH解析と合わせて、国際共同研究として論文発表をする計画となっている。トマトのコンパニオンプランツに関しては、ラッカセイとの共植の影響を正確に判断するため、2020年度も栽培と生育具合の再検討を行い、共植区のトマトの地上部新鮮重量と地上部乾燥重量が、コントロール区と比較して有意に増加している結果が得られた。現在までに、これらのサンプルの根組織内バクテリアのDNAは調整済みであるが、新型コロナウイルスの感染拡大防止に関する緊急事態宣言などの影響を受け、マイクロバイオーム解析はまだ終わっていない。
3: やや遅れている
2020年度は、予想以上の新型コロナウイルスの感染拡大のため、緊急事態宣言などで大学内での研究活動が制限されたことが原因で、マイクロバイオーム解析が遅れている。研究協力者が在籍しているマレーシア・モナシュ大学でも、新型コロナウイルスの影響が少なくない。
引き続き、遺伝解析のための「エンドファイト量のReal-Time PCRによる定量化」に向けて、特異的primerの適用を進めていきつつ、エンドファイトのFISH解析とマイクロバイオーム解析を行なっていく。現在、研究協力者であるマレーシア・モナシュ大学のRahman教授とは、メールとZoomを用いて議論しており、クラウドを用いた共有により次世代シークエンスのデータ解析などを行ってもらっているが、新型コロナウイルスの影響は少なくなく、今後の研究を効率的に進めるため、日本での次世代シークエンス解析を視野に入れている。
2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う緊急事態宣言下での研究制限などによって、マイクロバイオーム関係の実験に遅延が生じた。そのため、マイクロバイオームの次世代シークエンス解析へ向けての高額な物品費が使用されないままとなった。現在、準備が整いつつあるので、2021年度に次世代シークエンス解析費用として用いる予定である。また、同じく新型コロナウイルスの影響を受けて2020年度の出張旅費はゼロとなり、研究協力者との議論はオンラインで行ったので、その分も余っているが、これについては、全体の状況を見ながら使用していく。
すべて 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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