研究課題/領域番号 |
20K05982
|
研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
鈴木 剛 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (10314444)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | マイクロバイオーム / エンドファイト / イネ / Endosphere |
研究実績の概要 |
本研究では『マイクロバイオーム解析』と『植物組織内バクテリア局在可視化』を両輪に、エンドファイト群集の基盤情報を蓄積する。様々な環境下・生育状態のイネやトマト根組織内マイクロバイオームを解析し、エンドファイト群集として『植物の生育状況』と『バクテリア組織内局在』が連関しているバクテリア種を探索・同定し、この植物-微生物間相互作用に関係する植物側受容因子を遺伝学的に精査し、持続的農業に寄与する新しい育種戦略を構築することを目的としている。 2021年度は、イネに関しては、水田育成個体の根組織内のEndosphereのバクテリアのマイクロバイオーム解析結果を「R」を用いて統合的に判断し、昨年に引き続き、生育状況の差によって有意に存在量に違いが出たバクテリアをエンドファイト候補として選抜し、それらを特異的に検出できる16S rDNAの特異的primerを設計・検証した。また、上記研究に関連して、新たに1科のプローブを作成し、イネ根組織内での局在をバクテリアFISH解析によって明らかにした。研究協力者(マレーシア・Rahman教授)とは、本学で調整した日本の水田育成イネ由来のDNA16サンプルをマレーシアに送付し、マレーシア側でマイクロバイオーム解析を行ったところ、マレーシアと日本のイネ根組織内マイクロバイオームの特徴に大きな差異が認められ、国際共同研究成果として現在論文準備中である。 トマトのコンパニオンプランツに関しては、ラッカセイの共植の影響を2020年度・2021年度と2年間にわたり調査し、共植区のトマトの地上部新鮮重量と地上部乾燥重量が、コントロール区と比較して有意に増加している結果が得られた。また、2020年度・2021年度のサンプルの根組織内バクテリアのマイクロバイオーム解析を行い、ラッカセイに誘導されてトマト根へ侵入した可能性が考えられるバクテリアが見出された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、ある程度新型コロナウイルスの影響をコントロールでき、マレーシアとの共同研究も順調に進んだので、ほぼ予定通りの進行まで回復してきている状況であるが、ターゲットのエンドファイトについての確認作業・遺伝的調査準備が若干遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
イネとトマトのエンドファイトを特定し、遺伝解析のための「エンドファイト量のReal-Time PCRによる定量化」に向けて、特異的primerの適用を進めていきつつ、エンドファイトのFISH解析とマイクロバイオーム解析を行なっていく。マレーシア・モナシュ大学のRahman教授との共同研究については、マイクロバイオームデータ解析をブラッシュアップした上で、共著論文を投稿する。トマトのコンパニオンプランツ調査では、畑での実証実験も行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は新型コロナウイルスの感染拡大防止のための影響はある程度抑えられ、マイクロバイオーム関係の研究は行えたが、人件費・謝金を用いた実験までは行えなかった。また、国際共同研究としてマレーシアへのサンプル送付や次世代シーケンスなどは実行できたが、マレーシアと日本の間の行き来はできなかったため、議論はZoomで行うしかなかった。このように、昨年度同様に、新型コロナウイルスの影響を受けて2021年度の旅費や人件費・謝金はゼロとなったので、その分は余っているが、これらについては、コロナを取り巻く社会情勢の状況を見ながら使用していく。
|