研究課題/領域番号 |
20K05983
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
田中 裕之 鳥取大学, 農学部, 准教授 (70283976)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コムギ / 野生種 / 高温ストレス / 小麦粉品質 |
研究実績の概要 |
高温ストレス下で栽培されたコムギは、小麦粉生地の弾力性が低下し小麦粉品質が低下する。本研究の目的は、高温ストレス下でも小麦粉品質が低下しないコムギの開発とそのメカニズムを解明することである。 本年度はコムギ育種に利用できる遺伝資源の拡大を目指し、野生種由来の高弾力性タンパク質をコードする遺伝子のコムギへの導入を進めた。まず、その遺伝子が座乗する野生種染色体がコムギ染色体へ転座した系統を昨年度後半に播種し、本年度の前半までガラス温室内で育成した。また同時期に、野生種染色体とコムギ染色体間での組換えを誘発させるコムギ系統も播種し、同様に育成した。育成中、DNAマーカーとタンパク質マーカーによって目的個体を選抜した後、これらの人工交配を行い雑種種子を収穫した。本年度の後半にそれらの種子を播種し、現在ガラス温室内で育成中である。 次に、昨年度にも用いた高温耐性に優れるスーダンのコムギ実用品種、および野生種の染色体を1対ずつ添加したコムギ実験系統シリーズを上記と同時期に育成し、開花後に穂培養に切り替えて高温ストレスを与えた。この実験の方法は次年度以降に上記の系統開発が完了した後に行う計画だが、本年度は実験条件を検討するために行った。また、この実験の品種・系統は、高温ストレス下での小麦粉品質維持・向上に貢献できる野生種由来の新たな遺伝子・染色体を探索することを目的として用いた。本年度は小麦粉生地の弾力性に関与するタンパク質以外で小麦粉品質に影響するデンプンに着目し、その量と組成を調査した。その結果それらの品種・系統の中に、高温ストレス下でも小麦粉中デンプンの量や組成がほとんど変動せず、通常条件下と同程度の小麦粉品質を維持できる品種・系統を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コムギ育種に利用できる遺伝資源の拡大を目指し、野生種由来の高弾力性タンパク質をコードする遺伝子のコムギへの導入について、順調に系統開発を進めることができた。また、次年度以降に計画していた高温ストレスを与える穂培養の実験条件について確立できた。さらに、高温ストレス下でも小麦粉中デンプンの量・組成がほとんど変動せず、通常条件下と同程度の小麦粉品質を維持できる品種・系統を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
野生種由来の高弾力性タンパク質遺伝子が座乗する微小染色体領域のみをコムギへ導入するための人工交配と、それに続く後代での個体選抜を引き続き行う。 高温ストレス下での小麦粉中デンプンの量・組成の維持に優れる野生種由来遺伝子・染色体を同定しつつ、それらをコムギへ導入するための系統開発を始める。
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