研究課題/領域番号 |
20K05988
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
手塚 孝弘 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (20508808)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 子房落下 / 種子発育不全 / 種間交雑 / 倍数性間交雑 / 生殖隔離 / 器官脱離 / タバコ / 植物遺伝育種 |
研究実績の概要 |
本研究では植物の育種的改良を妨げている生殖隔離を理解し、メカニズムを解明することを目指している。タバコの倍数性間・種間交雑において申請者が独自に見出した生殖隔離現象(タイプⅠ・タイプⅡ種子発育不全、子房落下)は、正常な種子を得ることができないため、後代を得ることができないという育種の障壁である。これらの生殖隔離について、2020年度は次のような実験を行った。 1)器官脱離は植物ホルモンであるオーキシンによって抑制されていることが知られている。そこで、倍数性が異なる種間での交雑において生じる子房落下についてもオーキシンで抑制できるのかどうかを調査した。異倍数性種間交雑後、果柄基部にIAAまたはNAAを処理したところ、子房落下が抑制され、種子を得ることができた。しかし、種子は発芽しなかった。組織切片により種子を観察した結果、オーキシン処理によって種子の発達異常は改善されていないことが明らかとなった。これらの結果は、異倍数性種間交雑では、種子発育不全が生じた結果、子房落下が引き起こされるという見解を支持していた。 2)タバコ栽培種との交雑で子房落下を起こす系統と起こさない系統とを交雑し、F1およびF2植物を得た。F1とタバコ栽培種との交雑から、子房落下は劣性形質であることが明らかになった。また、F2を用いた交雑実験から、子房落下は量的であるが、主働遺伝子が存在することが示唆された。 3)次世代―シーケンサーを用いた解析を行い、種子発育不全および子房落下に関与すると考えられる遺伝子を探索した。現在は、データの解析を進めている。 4)植物の倍数性を操作するために、コルヒチン処理などの条件を検討した。今後は、フローサイトメトリー分析も行い、倍数性を操作した植物体を作成し、実験に用いる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は種子発育不全および子房落下について、予定していた実験を進めることができた。着実に成果を出すことができており、本研究課題はおおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究で作成した分離集団を用いた解析を行い、遺伝子発現解析によって得られたデータの解析も進める予定である。また、倍数性を操作した植物体を作成し、種子発育不全や子房落下に関する解析に利用する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のため、研究活動が思うように進まない事態が生じており、次年度使用額が生じた。次年度は、予定している研究活動のために使用することを計画している。
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