研究課題/領域番号 |
20K05990
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
原 新太郎 東北大学, 生命科学研究科, 学術研究員 (10647019)
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研究分担者 |
佐藤 修正 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70370921)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ダイズ根粒菌 / Bradyrhizobium / 緑肥 / rpoB / 土壌微生物 |
研究実績の概要 |
ダイズ根粒菌の系統解析を次世代シーケンサーで行うために必要なデータベースの整理を行った。2021年3月の段階で公表されている300以上のBradyrhizobiumのゲノム情報を集め、全ゲノム比較に基づいて系統樹を作成し、そこに窒素固定や根粒共生、硝化脱窒などの機能遺伝子の情報を付与して系統ごとの特徴を確認した。それに対して、各菌株のゲノムからrpoB遺伝子もしくは従来の系統マーカー(16S rRNA遺伝子)の配列を抽出してそれぞれ系統樹を作成し、全ゲノム情報に基づく系統樹との比較を行った。その結果、rpoB遺伝子を用いることで、ある程度の解像度で解析を行うことができることを再確認し、従来の16S rRNA遺伝子の解析と比べてより詳細な解析を行えることが明らかになった。 ダイズの生育ステージによって定着する根粒菌の種類が変化する可能性があるため、本年度は10系統のダイズ品種を宮城県鹿島台圃場で栽培し、生育前半、開花期、子実肥大期の根粒を収穫し、rpoB遺伝子をターゲットとしたDNA解析により組成を調べた。供試した10系統のうち、特定のダイズ品種は他とは明らかに異なる菌叢であったが、それ以外の系統は圃場ないのばらつきに収まる程度の違いしか検出できなかった。使用した圃場の排水管理がうまくいかず、ダイズ品種の影響よりも圃場状況の影響が大きく影響したことが原因と考えられる。 ダイズ以外の緑肥植物を宮城県鹿島台圃場で栽培し、根に生息するBradyrhizobium属細菌の解析を行った。植物種によってBradyrhizobiumが異なる傾向を見出したが、詳細は解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Bradyrhizobium属細菌の解析に使用するデータベースの作成は概ね終了したが、ダイズおよび緑肥植物の栽培状況が思わしくなく、得られた結果の解釈が困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、圃場内の環境のばらつき(特に土壌の含水量)の影響が大きく、解析に支障をきたしてしまった。そこで、今後は圃場の土をポットに詰め、水分条件などの条件を揃えて緑肥植物の栽培を行う予定である。栽培後は根を回収し、一部をDNA抽出による微生物叢解析に使用し、残りをポットの土と混ぜ合わせてダイズ栽培に用いる。これにより、緑肥植物を漉き込んでダイズを栽培する状況を再現する。その後、ダイズ根粒を回収して根粒菌の組成を調べ、温暖化効果ガスN2Oを無害化する能力を有する根粒菌系統が増加するような緑肥植物の選抜を目指す。ポットを使用する栽培の場合、他の土地の土壌を使用することが容易なため、複数の土壌を使った栽培試験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、圃場栽培試験の規模縮小および遠方の試験区でのサンプリングは断念せざるを得なかった。次年度は、遠方の試験区から輸送した土壌をポットに詰めて試験を行うなどの工夫をしてサンプル数を増やし、当該年度に行う予定であった解析を合わせて行う。
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