研究課題/領域番号 |
20K05993
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
柏木 孝幸 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (40595203)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 炭水化物蓄積 / 倒伏抵抗性 / QTL集積 / イネ |
研究実績の概要 |
本年度の計画に基づき、BSUC11及びprl5を有する集積系統(NIL-BSUC11+prl5)とBSUC11及びPRL4を有する集積系統(NIL-BSUC11+PRL4)のホモ化個体をDNAマーカーで選抜した。両集積系統におけるホモ化率はそれぞれ5.5%、6.3%で想定通りであったが、昨年の結果から集積系統が2種へとなったことにより、予定していた個体数を確保できなかった。これにより、本年度の出穂から2週間毎の稈内炭水化物(ホロセルロース、リグニン、デンプン、ショ糖、単糖類)を出穂から6週目(収穫期)のみとし、代わりに対象を上位部節間(第2節間)と基部節間に分け、構造性炭水化物をα-セルロース、ヘミセルロース、リグニンへと変更し、上位部葉身の老化特性及び収量特性の解析を追加してQTL集積による影響をより詳細に解析した。また、収穫期の倒伏抵抗特性(倒伏程度、材料試験機による稈物理特性、押し倒し抵抗、稈形態)予定通り実施した。解析の結果、NIL-BSUC11+prl5は収穫期の単糖類のみを上位部、基部ともに1.5倍に増加させた。一方でNIL-BSUC11+PRL4では基部節間のヘミセルロースとリグニン含量が増加し、最終的に構造性炭水化物含量を16%増加させた。両系統とも押し倒し抵抗及び基部節間の物理強度(破断までの圧縮抵抗と歪み)の増加により倒伏程度の向上が確認されたが、NIL-BSUC11+PRL4では上位部稈の挫折抵抗及び基部節間の剛性における変化は確認されなかった。両系統とも稈径、草丈、収量の変化は示さず、葉身の老化は遅れる傾向を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はホモ化した集積系統の選抜と集積系統の稈内炭水化物蓄積特性及び倒伏抵抗性の解析を実施した。その結果として、ホモ化した集積系統を確保し、稈内炭水化物蓄積特性及び倒伏抵抗性における向上した形質を確認した。この中でBSUC11とprl5の集積系統では非構造性の炭水化物の蓄積、BSUC11とPRL4の集積系統では構造性炭水化物の蓄積が増加する傾向が明らかになった。さらに、その他の形質として形態や収量特性を解析し、対象としたQTLの集積による影響はないことを確認した。本年度の結果から、異なる炭水化物蓄積特性を示す倒伏抵抗性QTLの集積では、その組み合わせにより炭水化物蓄積特性が変化することが示された。研究は集積系統の確保が不十分であったために当初の予定より多少遅れているが、実施した多面的且つ詳細な解析によってQTLの集積による影響を総合的に評価できた。研究成果の公開としては現在論文1報を投稿中であるが、本年度中の受理は見込めない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は集積系統と近似同質遺伝子系統、加えて基準となるコシヒカリを水田圃場で十分な個体数育成し、出穂以降の稈内炭水化物蓄積特性を解析する。稈内炭水化物蓄積特性では上位部節間(第2節間)と基部節間を対象にα-セルロース、ヘミセルロース、リグニンの構造性炭水化物、デンプン、ショ糖、単糖類の非構造性炭水化物を出穂から経時的に測定する。倒伏抵抗性では圃場条件下での倒伏程度、材料試験機による稈物理特性(圧縮試験による破断までの圧縮抵抗、歪み、剛性)、押し倒し抵抗、稈形態を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の請求額を予定通り使用したが、昨年度の繰越分があるため未使用額が本年度所要額の0.3%程生じた。未使用額は少額であることから研究費の有効利用を考え、次年度に繰り越すことにした。
次年度の研究費は主に集積系統の稈内炭水化物蓄積特性及び倒伏抵抗性の解析のために使用する。炭水化物含量の測定では、上位部節間と基部節間を対象に構造性炭水化物(セルロース、リグニン)と非構造性炭水化物(デンプン、ショ糖、単糖類)の解析に用いるプラスチック系器具等の消耗品と薬品に研究費を使用し、倒伏抵抗性の解析ではサンプリング等に用いる消耗品に研究費を使用する。また研究成果公開のための学会発表及び論文発表にも研究費を使用する。
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