最終年度は種子粒大と種子冠水抵抗性(抵抗性)の関係を調べた。黄ダイズの中~大粒品種では粒大と抵抗性は有意な負の相関関係にあり、同一品種でも小粒では吸水に伴う子葉損傷が軽く、抵抗性が優れた。これは、小粒の方が子葉・種皮間および子葉間の隙間が小さく、吸水が緩やかであったため、吸水時に子葉が水に晒されにくいためと推察された。粒大が抵抗性に影響する機序解明が抵抗性の遺伝的改良上重要と言える。一方、遺伝的改良に待たず、大粒種子を選別除外することで、種子冠水害の軽減が図れる可能性が示された。 前年度までの成果は以下の通り。本研究独自の抵抗性評価指標である、吸水中断種子の吸水量(A)と乾燥処理による水分減少量(E)の比(E/A)は、傷粒が多い場合は除外して測定すべきであるが、種子含水率調整は不要であったため、測定前の試料調整作業の軽減が可能である。種子浸漬液の濁度は抵抗性と負の相関を示し抵抗性評価指標として有用で、種子浸漬液中のポリフェノール類の濃度は吸水による子葉損傷の抑制を通じて抵抗性と正の相関を示す。ポリフェノール類が一定濃度を超えると種子浸漬中の微生物増殖を抑制すると推察されたが、検証は十分ではない。抵抗性に関わる種皮の透水性に関わる特性の迅速評価法として種皮の撥水性を調べたが、撥水性と種子の吸水特性および抵抗性との関係は不明瞭で、種皮の撥水性を抵抗性評価に使うのは困難であった。 本研究期間を通じた成果をまとめると以下の通り。抵抗性評価指標E/Aのデータを従来より効率的に得る方法を明らかにした。さらに、種子浸漬液の濁度は新たな迅速簡便評価指標として有望で、これをE/Aと組合せることで、抵抗性の評価精度を向上できる成果を得て、所期目標を達した。種皮に含まれるポリフェノール類の利用や大粒を播種時に除外することでも抵抗性改善が期待できるとの結果は、目標を上回る成果である。
|