研究課題/領域番号 |
20K05997
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
仲田 麻奈 名古屋大学, 農学国際教育研究センター, 助教 (70623958)
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研究分担者 |
若山 正隆 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任講師 (20721913)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イネ / 土壌水分変動 / 根 / フェノタイピング / メタボローム解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、イネの不均一な水分条件への適応性に関連する代謝物の変動と遺伝制御について明らかにすること、そのためのフェノタイピング手法を確立することを目的とした。土壌中で起こり得る湿潤→乾燥→湿潤の土壌水分変動条件を、水耕液あるいは寒天培地にて再現した。そのような水分変動条件に対し高い適応性を示すイネは、そうでないイネと比較して、表現型の違いには有意な差は確認されない場合でも、代謝物の変動に大きな違いがあることが明らかとなった。すなわち、高い適応性を示すイネは、乾燥ストレス解除24時間後から代謝物の反応が対照区(乾燥ストレスなし)に近づく傾向がみられ、乾燥ストレス解除72時間後には、対照区と同様の代謝反応に戻ることが明らかとなった。また、その反応が根→葉鞘→葉身の順で顕著に現れ、品種間にも違いがみられた。根の炭素安定同位体比(δ13C)を調べた結果、水分変動条件に適応できないイネは、乾燥ストレス解除にδ13Cが有意に上昇したことからも、乾燥ストレス解除による環境の変化がよりストレスとなり、回復できないことが示唆された。 昨年度の課題であった根系形質の画像取得において、寒天培地にゲランガムを用いること、写真撮影ではなくスキャナーで画像を取り込むことで評価方法を工夫した。また、画像解析ソフトにWinRHIZOを用いていたが、SmartRootも併用して異なる画像解析ソフトの解析結果の違いについても検討を行った。その結果、総根長に有意な差はなくても、直径の小さい側根はWinRHIZOで測定すると過大評価していることがわかり、SmartRootの方が適していた。この結果も踏まえ、使用する解析ソフトとデータの取り込み方法も探索していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イネの乾燥ストレス解除後の代謝反応について、器官間と品種間の違いを明らかにできた。またフェノタイピングにおいて、昨年度の課題点も改善でき、低コストでハイスループットなフェノタイピング手法の確立に向けて、評価システムを構築できつつある。一方で、根系を構成する異形根に着目したメタボローム解析を行う予定であったが、解析に十分なサンプル量を調整することができなかったため、次年度に行うことにした。これに関しては、保存してあるサンプルを用いて解析を進めていくこととする。これらの状況を踏まえ、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
メタボローム解析の結果を整理し、水分変動に対して高い適応性を示すイネ特異的な代謝物を器官別に特定する。特定した代謝物に関連する酵素活性や遺伝子発現について調べることで、不均一な水分条件へ適応メカニズムを明らかにする。 またこれまので結果より、処理によって栽培培地中のイオン濃度に違いがみられたため、水耕液あるいは寒天をサンプリングして、イオン濃度とくにNO3-とNH4+の変化について調べ、植物体の生育や代謝物変動との関連性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に計画していた根系の構成根別のメタボローム解析について、サンブル量が少なく、サンプルの調整が困難であったため、量を増やして次年度に行うこととした。そのため、支出予定額とは異なる支出となった。 サンプルは-80℃で保存してあるので、今年度に再度サンプルの調整を行い、メタボローム解析を進め、次年度使用額とあわせて今年度の請求額分を使用する予定である。
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