研究実績の概要 |
植物のアレロパシーがダイズのイソフラボンと根粒着生とに及ぼす影響は明らかでない.ダイズのイソフラボンは根粒形成の促進だけでなく,機能性の有効利用の観点からも他植物がイソフラボンに及ぼす影響を明らかにすることは重要である.本課題では,アレロパシーによって根からのアグリコン放出が増加した結果,根のイソフラボン含量が低下する可能性をこれまでに考察した.ただし,異種との近接栽培は競合を通して土壌水分含量や土壌栄養状態に影響するため,根粒着生に及ぼすアレロパシーと競合の両者の影響を評価する必要がある.そこで本研究では,アレロパシー植物とダイズとの混植がダイズの根のイソフラボン組成と根粒着生に及ぼす影響を競合条件とともに明らかにした. ダイズ根粒菌を接種した用土を充填したプラスチック容器3個を接合し,接合面をメッシュで仕切ったものを設置し,両横の容器の片側にフクユタカ,もう片側に九系449号(根粒非着生系統)を播種した.中央に九系449号,ヒマワリ,マリーゴールド,オナモミ,ムクナ,ヨモギを供試ダイズに先行して栽培した. その結果,マリーゴールドとの混植栽培では,ダイズの根粒数・根粒重が対照区と比較して著しく増加した.ダイズ根のイソフラボンアグリコン含量は対照区の約36%に減少した.根と根圏土壌のイソフラボンはその大半をダイゼインが占めた.一方,植物を栽植した状態で散水した後1日間放置した時の土壌水分含量,根粒非着生ダイズ茎の窒素含量を積算的な土壌窒素栄養条件の指標として根粒数・根粒重との関係を求めると,マリーゴールドは土壌水分条件,土壌栄養条件に関わらず根粒数・根粒重が増加していた. 以上から,マリーゴールドとの混植栽培によりダイズの根粒数・根粒重が増加する一方,ダイズ根のイソフラボン含量が著しく低下した.この反応は,マリーゴールドからのアレロパシー物質によって生じたものと示唆された.
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