研究課題/領域番号 |
20K06001
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
荒木 卓哉 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (10363326)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ハダカムギ / 硝子質粒 / 硝子率 / 窒素分施 / 胚乳細胞 |
研究実績の概要 |
ハダカムギは需要が高まっている中,降雨や作付面積の拡大に伴い播種時期を遅くせざるを得ない「晩期播種」で栽培した場合,初期生育の抑制や栄養成長期の短縮に伴い収量が減少する.また,品質評価項目の一つである硝子率は値が高いと搗精に時間を要し,コスト増となり,また,硝子質程度の均一程度にばらつきがあると,搗精にもばらつきがみられる課題がある.研究初年度では,開花後の子実成長を形態学的および生理生態学的手法により,また,出穂後の気象要素との硝子質粒発生との関係を解析することで,硝子質粒発生の機作を明らかにするとともに,窒素分施体系の改善に着目して,晩期播種における高収量高品質栽培技術を提案する目的で実施した.硝子率は12月中旬に播種する晩播区において11月中旬に播種する標播区比べて有意に低い値を示した.また,硝子率は各播種時期において窒素施用を慣行条件で行った慣行区,中間追肥および穂肥を重点施用した条件(それぞれ中間区および穂肥区)において差は認められなかった.開花後の胚乳細胞の形態の経時的変化を観察したところ,開花後から胚乳細胞の増加認められその後肥大が確認された.一般に硝子率と密接な関係があるとされるタンパク質の蓄積は開花後20日以降に認められ,胚乳細胞の隙間を満たすように配置されていることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
晩播における乾物生産,収量ならびに品質についてそれらの関連項目について調査して,適期播種における結果と比較することで,晩播における乾物生産および品質特性を明らかにすることができた.また,出穂・開花後の子実成長と硝子質粒発生との関係性を明らかにするための基礎情報として,開花以降の胚乳細胞の成長を定期的に確認することができた.研究2年目以降に乾物生産および品質特性の品種差異,穂内の着生位置による子実成長および同一個体内における異なる穂における子実成長を解析を実施する上での有益な基礎情報としての活用が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
晩播における乾物生産特性および品質特性は初年度に引き続き適期播種と比較しながら年次反復を考慮しながら解析を継続する.また,硝子率は一粒ごとの硝子質程度に基づいて算出された値である.硝子率に影響を及ぼす要因として,子実一粒ごとの硝子質程度に関連する事象を解析することが重要であり.具体的には,穂内子実の着生位置による成長の差異,個体内の穂間における成長の差異,開花から成熟期までの日数,出穂期以降の気象用途との関係および刈り取り時期との関係である.これらを高硝子率品種と低硝子率品種を用いて検討して,硝子質粒発生の機作に関する知見を得る.
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