研究実績の概要 |
本年度は,本研究ではハダカムギにおける硝子率発生の実態について明らかにするために分げつおよび1穂内の子実着生位置ごとの硝子率の変異とその要因について解析した.また,晩播種における収量性について検討するために,節位別の分げつ発生率に着目して乾物生産を検討した. 原麦1粒の硝子率は硝子率は分げつ間において違いが認められ, 高位節分げつになるほど高くなった. 硝子率は成熟期9日前から急激に低下した.硝子率が低下した時期において相対湿度の低下と4mmの降雨が認められた.成熟期直前の硝子率の低下は乾燥後の吸水により硝子質粒が粉状化したためであると推察された.子実含水率は開花後徐々に低下した.分げつごとの子実着生位置別硝子率は下段ほど高くなり,その変異は高位節ほど大きくなった.開花後35~40日における子実含水率は中下段よりも上段において低くなっていることから,着生位置別の硝子率の変異は,着生位置ごとの乾燥程度の違いが吸水による粉状化に差異を生むことで生じていると示唆された.以上のことから, 圃場内における硝子率の変異は,成熟期直前の子実含水率に違いがある分げつおよび子実着生位置間において,吸水による粉状化に差異があったことで生じたと考えられた. 出穂期において個体数は処理間で有意差が認められ,晩播11g区が最も多く,標播が最も少なかった.個体あたりの茎数および地上部乾物重は標播区が有意に多く,次いで晩播8 g区,晩播11 g区の順となった.茎の出現率および生存率は,いずれの処理区においても出現の早い茎で高く,遅い茎で低い傾向がみられたが,個体の構成は異なった.収量には各処理で有意差が認められず,面積当たりの穂数は晩播11g区が最も多く,晩播8g区が最も少なかった.以上のことから,本実験では個体あたりの茎数および穂数に関わらず,収量への寄与はMS~T2が大きいことが示唆された.
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