本研究では,異なる播種量および施肥体系が遅まきした場合におけるハダカムギの分げつ構成,乾物生産および収量におよぼす影響について検討した.出穂期において個体数は処理間で有意差が認められ,晩播11 g区が最も多く,標播が最も少なかった.個体あたりの茎数および地上部乾物重は標播区が有意に多く,次いで晩播8 g区,晩播11 g区の順となった.茎の出現率および生存率は,いずれの処理区においても出現の早い茎で高く,遅い茎で低い傾向がみられたが,個体の構成は異なった.標播区において,各分げつの出現率は高いが,T3以降の出現分げつは生存率が低いため個体あたりの穂数は4本程度となり,個体の有効茎歩合は57%となった.晩播区ではCおよびT3以降の出現がみられなかったため,個体あたりの茎数は3本程度になった.T2の出現率および生存率は晩播8 g区と晩播11 g区で差が認められ,T2の出現率が高く生存率が低い晩播11 g区は,晩播 8 g区より少ない2本程度となった.成熟期における乾物分配は個体あたりの茎数による影響がみられた.茎数が多い標播区では,T3以降に出現するの茎の乾物割合が31%と大きくなった.茎数が少ない晩播11 g区ではMSおよび初期に発生するT1およびT2の割合が70%を占め,他処理区より大きくなった.個体あたりの穂数は,有意な差が認められたが,収量への影響はみられなかった.また,収量には各処理で有意差が認められず,面積当たりの穂数は晩播11 g区が最も多く,晩播8 g区が最も少なかった.以上のことから,本実験では個体あたりの茎数および穂数に関わらず,収量への寄与はMS~T2が大きく,個体あたりの茎数が多い場合ではT3,T4 およびT1pといった生存率の低い分げつが,MS,T1およびT2の穂への乾物分配に影響を及ぼしている可能性が示唆された.
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