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2021 年度 実施状況報告書

サツマイモの食味に影響する糖代謝制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K06002
研究機関石川県立大学

研究代表者

坂本 知昭  石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (00345183)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードショ糖蓄積 / ショ糖リン酸合成酵素 / インベルターゼ / 14-3-3
研究実績の概要

令和2年度に行った別の研究プロジェクトで、サツマイモ塊根に対する高温処理がショ糖を蓄積させる可能性を見出した。そこで本年度は、塊根を60、40、13℃で0~24時間処理し、遊離糖含量の変化と糖代謝関連遺伝子の発現を調べた。その結果、13℃と40℃処理ではショ糖を始め3種の遊離糖含量に変化は認められなかったが、60℃処理ではショ糖含量が徐々に増加し、6時間後には約1.3倍に達した。
ショ糖合成の律速酵素であるショ糖リン酸合成酵素 (SPS) 遺伝子は塊根内で2種発現していたが、一方は高温処理により抑制され、もう一方は発現が増加した。尚、大腸菌で発現した組換えSPSタンパク質を用いて酵素活性を調べたところ、高温処理により発現が増加したSPSは高温条件下でも比較的高い活性を維持していた。ショ糖分解の主要酵素であるインベルターゼ (INV) 遺伝子3種のうち、1つは高温処理により抑制され、1つは一定、残りの1つは発現が増加した。さらにSPSの活性制御因子14-3-3遺伝子6種のうち、2種は高温処理により発現が増加した。これらの結果から、高温処理によりショ糖が蓄積する現象には主にSPSが関わっていると予想された。
低温によるショ糖の蓄積は主にINVの活性低下によると考えているが、低温処理でショ糖含量が1.3倍になるまで「高系14号」で10日、「ベニアズマ」で20日掛かる。「合成を促すアプローチ」と比べ「分解を抑えるアプローチ」ではショ糖の蓄積に時間がかかるであろうことは否めない。高温処理塊根では複雑な遺伝子発現パターンが認められ、酵素活性やタンパク質の機能が必ずしも遺伝子発現量の多寡と一致しないことを考え合わせると、高温によりショ糖が蓄積するメカニズムを解明し、迅速糖化技術の開発に結びつけるためには、まず酵素・タンパク質レベルで何が起きているか明確にする必要があると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

別の研究プロジェクトの成果がきっかけとは言え、高温処理でショ糖が蓄積する現象を見いだせたことは、サツマイモ塊根の迅速糖化技術の開発により近づけたと期待している。当初の計画では、低温に代わるINV遺伝子の発現抑制要因を探索するため、低温によるINV遺伝子発現制御について解析を進めることにしているが、「分解を抑えるアプローチ」と比べ「合成を促すアプローチ」の方がより早くショ糖を蓄積させられることは想像に難くない。SPS活性はグルコース6-リン酸により高まることが知られているが、糖化技術として応用することは難しい。サツマイモ塊根のSPS活性を高める条件は他に報告例がない。したがって、高温処理は「ショ糖合成を促す」画期的な条件であると言える。さらに、短時間の処理であることから生理障害を生じさせることなく高糖化することが可能であること、特殊な機械・設備を必要とせず、(食品) 乾燥機のような汎用機器でも処理可能であることも、実用化に向けた大きなアドバンテージとなりえる。以上の理由から、引き続き高温糖化現象のメカニズム解明を進めることは、本研究課題の当初の目標に向けて、望外の近道となると期待される。

今後の研究の推進方策

高温によりショ糖が蓄積するメカニズムを酵素・タンパク質レベルで明らかにするため、以下の3つの実験を行う。
①サツマイモ塊根内のSPSおよびINV活性の測定:60℃で0~24時間処理したサツマイモ塊根中のSPSおよびINV活性を測定する。同様に40℃と13℃における両酵素活性を比較することで、ショ糖の蓄積がショ糖合成の促進によるものか、分解の抑制によるものかについて明らかにする。
②SPSと相互作用する14-3-3の同定:SPSを結合標的としその活性を制御 (恐らく抑制) する14-3-3候補として、申請者が作成したサツマイモ塊根の網羅的mRNA全長配列ライブラリーから6種類の配列を得ている。このうち2つが高温処理により発現量が増加したが、実際にSPSを結合標的としているかは明らかでない。そこで酵母two-hybrid法を用いて、2種類のSPSと6種類の14-3-3の間のタンパク質相互作用の有無を明らかにする。
③14-3-3がSPS活性に及ぼす影響:14-3-3はSPSと結合しその活性を抑制すると考えられているが、活性を高める可能性も否定できない。そこで、サツマイモ塊根から抽出したSPS粗酵素液に大腸菌で発現・精製した組換え14-3-3タンパク質を添加することで、SPS活性が減少するのか、増加するのか明らかにする。
これら3つの実験により高温処理によるショ糖蓄積の概要が明らかになる。例えば実験②と③の結果から、高温処理により発現が増加した14-3-3がSPSを結合標的としない、あるいは活性を抑制しないことが明らかとなれば、迅速糖化を実現する上で影響を考慮する必要がなくなる。つまりこれらの実験から、技術開発に向けた研究を進めるにあたり何をターゲットにすべきかが明確となる。

次年度使用額が生じた理由

前倒し支払い請求分の内、昨今の情勢(コロナ+ウクライナ)により海外製試薬、消耗品類の入荷が大幅に遅れたり、一部目処がたっていないため。

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公開日: 2022-12-28  

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