研究課題/領域番号 |
20K06004
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研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
岩岡 恵実子 兵庫医療大学, 薬学部, 講師 (60411980)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | トウキ / 駆お血 |
研究実績の概要 |
日本社会はこれから急速に高齢者人口が増大する。高齢者は心身虚弱やフレイルなどの漢方薬が奏効する病態にあることが多く、今後、漢方薬の需要がさらに拡大すると予想されるが、一方で近い将来その材料である生薬原料の入手が困難になることが懸念されている。 現在、材料である生薬原料は約8割を中国からの輸入に頼っているが、天然資源の枯渇や中国国内での需要拡大などで今後の生薬原料の安定供給が不安視されており、日本国内での安定かつ高品質な薬用作物の生産が急務である。 これに呼応して、日本各地での薬用作物の栽培が活性化しており、新規生産者による栽培が試みられているが、生薬は天然物であるため、気候や産地などの生育環境によって薬効や含有成分に変化が生じる可能性がある。よって各栽培地において高品質な薬用作物の栽培を行うためには、薬用とする部分に薬効成分が多く含まれることを確認する品質の評価が非常に重要である。しかし、現状では『日本薬局方』に定められた規格適合品の栽培を目指し、結果、必ずしも薬効を担保しない生薬の主要成分の含有量で品質が評価されていることが多い。薬用部位における薬効成分の有無は、生薬、さらには漢方製剤の薬効に関わる非常に重要な条件であるにも関わらず、未だ有効成分が明らかになっていない生薬が複数存在する。よって、将来の原料生薬の枯渇に対する対策として、生薬の品質評価を成分分析のみならず薬効も含めた多方面から検討し、より良質な生薬の栽培条件を確立することは大変重要な検討課題である。 そこで今年度は、まずは市販のトウキよりエキスを作成し、お血の実験モデルを使用して安定的に駆お血活性を評価できることを確認した。さらに、HPLCおよびLC/MSを用いて、これまでに活性を確認しているアデノシンの定量や、網羅的なクロマトパターン分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、新型コロナウイルス蔓延により、特に前半は状況が定まらずに本研究に着手することが出来なかった。その結果、研究の始動が非常に遅くなったため、進捗状況は遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
市販の生薬トウキに関して、安定的に駆お血活性が評価できることを確認したため、今後はこのトウキエキスを各種クロマトフラフィーを使用して分画し、活性のある化合物群を見出す予定である。 また、これまでにトウキに含有されるアデノシンに駆お血活性を見出していることから、各フラクションにおけるアデノシンの含有量や、主成分であるリグスチリドの含有量と駆お血活性の相関についても検討する予定である。 さらに、より有効なトウキを使用法を検討するため、トウキの主根と細根を分別し、駆お血活性および含有成分の相違を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の遅れにより、使用予定だった実験動物や試料の購入が予定よりも少なかったことと、新型コロナウイルス感染症蔓延により、予定していた学会参加がなくなったため。
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