研究実績の概要 |
ジャガイモ塊茎の休眠および代謝の制御は,育種,栽培,流通において考慮すべき重要な課題である。これまで様々な品種について休眠特性(休眠期間の長さや萌芽条件)や貯蔵中の成分変化などが明らかにされてきたが,その生理機構には不明な点が多い。本課題では,様々なジャガイモ品種の塊茎について,磁気共鳴画像法(MRI)による画像解析と核磁気共鳴(NMR)法による網羅的代謝解析(メタボロミクス)を実施する。維管束の分布や走行などの組織構造,貯蔵中の水分動態および代謝の変化を明らかにし,貯蔵中の新規生理機構を明らかにすることで,育種戦略や萌芽制御技術および貯蔵技術を開発するための新規シーズの創出に貢献することを目的とする。 本年度は、2020年度と同様に休眠期間の異なる7品種をを調査対象とし、MRI計測およびNMRメタボロミクスサンプルの調製を完了した。また,2020年産の7品種全てについて代謝物20品種の同定および定量を完了した。MRI画像から萌芽レベルを5段階(0, 全く萌芽なし; 1, 芽を小さな点として目視確認可能; 2, 芽の大きさが5mm以下; 3, 芽が5mm前後まで成長; 4, シュートが成長中)に定義し、多変量解析による代謝プロファイリングを実施した。萌芽レベルの違いによる代謝変化の程度は品種によって大きく異なり、主に一部の糖および有機酸の寄与が大きかった。引き続き、MRI画像における水信号の変化と代謝物変化の関係について解析を進めている。
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