研究課題/領域番号 |
20K06007
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
田中 良 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 研究員 (30738109)
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研究分担者 |
中野 洋 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, グループ長 (10414814)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水稲 / 再生二期作 / 収量 / 非構造性炭水化物 / 地球温暖化 |
研究実績の概要 |
今後、地球温暖化が進むと、国内の全域で水稲の栽培可能期間が長くなると予想され、再生二期作の導入が西日本を中心に現実味を帯びてくる。これまでに、切株の非構造性炭水化物(NSC)量と2回目稲の収量に正の相関関係がある等の報告はなされているものの、NSCの役割やそのほかの形質に関する報告は限られている。そこで本研究では、準同質遺伝子系統(NIL)等を用いた試験や切株の葉身を切除する試験等を行うことにより、再生二期作における切株のNSCや葉身の役割や品種に求められる重要形質を明らかにしようとした。 福岡県筑後市にある農研機構九州沖縄農業研究センターの試験圃場において、2019年及び2020年に、「品種・系統(「北陸193号」及び多収系統)及び1回目の稲の切株における葉身切除処理(切除又は無切除(対照))が水稲再生二期作における1回目及び2回目の稲の収量及び収量構成要素に及ぼす影響」を調べた。2019年では、両品種・系統とも、2回目の稲の収量は、葉身切除処理が対照に比べ籾数が少ないことにより少なかった。したがって、切株における葉面積指数の増加は籾数の増加を介して2回目の稲の増収に貢献すると考えられた。また2020年では、多収系統における2回目の稲の収量は、葉身切除処理が対照に比べ籾数が少ないことにより少なかった。しかし、「北陸193号」における2回目の稲の収量は、葉身切除処理と対照との間に差はなかった。切株に残存したNSCを調べてみると、2019年ではNSC量は品種・系統間で差がなかったが、2020年では「北陸193号」は1回目の稲の籾数及び登熟歩合が低いことによりNSC量が高くなった。これらのことから、2回目の稲の収量に対する切株の葉身の貢献度は、NSC量が低い場合には高く、逆にNSC量が高い場合には低くなることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目と2年目に計画している「シンク容量に関与する遺伝子が異なる品種・系統における1回目の稲の収穫高さが2回目の稲の収量に及ぼす影響」及び「成熟期前後の切株のNSC量の異なる品種における1回目の稲の収穫時期が2回目の稲の収量及び収量構成要素に及ぼす影響」については、順調に進捗しており、2020年のサンプルの分析及び試験結果の解析を行っているところ。また、3年目と4年目に計画していた「1回目の稲の緑葉が2回目の稲の収量及び収量構成要素に及ぼす影響」については、前倒しで試験を開始し、2回目の稲の収量に対する切株の葉身の貢献度は、NSC量が低い場合には高く、逆にNSC量が高い場合には低くなることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
「シンク容量に関与する遺伝子が異なる品種・系統における1回目の稲の収穫高さが2回目の稲の収量に及ぼす影響」及び「成熟期前後の切株のNSC量の異なる品種における1回目の稲の収穫時期が2回目の稲の収量及び収量構成要素に及ぼす影響」について、サンプルの分析及び試験結果の解析を行い、研究成果を公表する。また、「作期及び1回目の稲の収穫高さが1回目及び2回目の収量に及ぼす影響」や「追肥時期及び1回目の稲の収穫高さが1回目及び2回目の収量に及ぼす影響」について、2021年から圃場試験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の蔓延により、当初計画していた出張等を取りやめたため、次年度使用額が生じた。2021年度は、本助成金により圃場試験を推進するとともに成果の公表等を行う。
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