研究実績の概要 |
水稲―大豆の田畑輪換体系において、大豆の単収増加を目指して堆厩肥を投入すると、復元田で栽培する水稲の窒素吸収が増えるため食味が低下しやすい。本研究では、窒素供給量の増加に伴う窒素吸収量の上昇が少ないイネを探索する。本年度は、候補として、多窒素条件で栽培した際の葉面積や光合成速度の増加量が他の品種より小さい水稲品種「千葉旭」と野生型(台中65号)より側根数が少ないOsiaa13変異体に着目した。 140日かけて窒素が溶出する緩効性肥料を用いて、ポットあたり窒素施与量が1, 2, 3, 4gの4水準(それぞれN1, N2, N3, N4処理と呼ぶ)でイネを栽培した。 収穫期における千葉旭の窒素吸収量は、N1, N2, N3, N4処理でそれぞれ1.39, 2.27, 2.22, 2.55g(N4処理ではN1処理の1.83倍)であった。千葉旭と生育期間が同程度で、多窒素条件で葉面積や光合成速度が大きく増加するキヨスミでは、窒素吸収量がそれぞれ1.66, 1.71, 2.22, 2.74(N4処理ではN1処理の1.65倍)であった。両品種とも窒素供給量が多くなるほど窒素吸収量が増加し、N1処理と比較したN4処理における窒素吸収量の増加程度はキヨスミより千葉旭が大きいことから、千葉旭は選抜対象ではないと判断した。 収穫期におけるOsiaa13変異体の窒素吸収量は、N1, N2, N3, N4処理でそれぞれ1.23, 1.79, 2.33, 1.64g(N1処理に対してN3,N4処理でそれぞれ1.89, 1.23倍)であった。台中65号では、1.35, 2.14, 2.14, 2.67(N4処理ではN1処理の1.98倍)であった。Osiaa13変異体も、N3処理までは窒素供給量が多くなるほど窒素吸収量が増加したため、選抜対象ではないと判断した。
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