研究課題/領域番号 |
20K06010
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
福岡 峰彦 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (40435590)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イネ / 不稔率 / 稔実率 / 高温不稔 / ハイスループット |
研究実績の概要 |
本研究では、籾の内部に子実が存在する稔実籾と、高温等の影響により受精に失敗した結果として籾の内部に子実が存在しない不稔籾を、非侵襲的かつ確実に分別した試験用サンプルが必要となる。これには従来、籾を一粒一粒指で押さえた際の触感により子実の有無を判定する方法や、薬液による子実の染色および籾殻部分の脱色を行ったのちライトテーブル等を用いて籾に可視光を透過させて子実の有無を判定する方法が用いられているが、圧迫による構造の破壊や薬液による変性といった不可逆的な変化が籾に生じうる侵襲的な方法であるため、脱穀しただけの状態の籾を対象とするイネ不稔籾の迅速判別手法の確立を目指す本研究におけるサンプル調製の方法としてはいずれも採用できない。 そこで、X線を用いて籾を透視して内部の子実の有無を非侵襲的に判別するために、平面X線撮影装置を導入した。これを用いて、過年度に確保してあった、不稔籾と稔実籾が混在している籾サンプルを不稔籾と稔実籾に分別し、不稔籾と稔実籾の分離を静電分別により行う上での基本的な特性を把握するための小規模のサンプルセットを作成した。 また、静電分別に用いる用具を制御された電圧に帯電させるための高電圧帯電装置および簡易静電吸着板を導入し、これらを用いて、前記した小規模サンプルセットに含まれる不稔籾と稔実籾を対象として、静電気による挙動を確認するとともに、不稔籾と稔実籾の分離に適した手法および装置構成の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の流行の影響により、出勤制限等による業務の遅延やサンプル確保のための屋外栽培の機会の喪失、X線撮影装置の運用に必要な労働安全衛生教育の受講に遅滞が生じた。そのため、予定より概ね3か月遅れての進行となっている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、①不稔籾と稔実籾の物理・形態特性の解明、②物理・形態特性を踏まえた静電選別装置の開発、③品種による籾の形状等の違いが及ぼす影響の評価、④従来法との比較による評価特性の検証および実使用条件でのブラッシュアップ、の順で研究開発を進めることを予定しており、基本的な流れに変更はない。 ③および④を実施するためには前提として①および②が概ね完了している必要がある。①および②は研究期間の概ね前半、すなわち次年度半ば頃までの実施を当初予定していたが、前記した遅延の影響により、完了が次年度後半までずれ込むことが想定される。③および④で使用するサンプルの調製の一部については①および②の完了を待たずに着手が可能と見込まれることから、これを①および②と並行して実施することにより、遅延からの回復を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
課題提案の段階で計画したX線撮影装置とは異なる、相対的に安価な装置を導入したため。これにより生じた次年度使用額は、今後実施を予定している静電選別装置の試作を効率的に実施するための費用等に充当することを予定している。
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