研究課題/領域番号 |
20K06014
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
岸本 宗和 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (20603195)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ワイン / ブドウ / 気候変動 / 温暖化適応 / 副梢栽培 / アントシアニン |
研究実績の概要 |
気候変動による気温の上昇は、ブドウの生育・成熟および果実成分含有量に大きな影響を与え、ワイン品質を低下させる脅威である。ブドウの新梢摘心と花穂切除処理により誘導される副梢を利用する栽培技術(特許第6670489号)は、ブドウの成熟期を気温が低下する晩秋に遅らせることが可能であり、ワイン用ブドウ栽培における温暖化適応方法の一つとして期待される。本研究は、生育・成熟期を遅らせて収穫を望む時期に変更する新たな計画栽培モデルの構築を目的としており、2020年は以下の点について実施した。 ①山梨大学附属小曲農場(甲府市小曲町,標高250 m)で栽培されるマスカット・ベーリーA(MBA)およびカベルネ・ソービニヨン(CS)を供試樹として、MBAについては5月15日、6月2日および6月18日に、CSについては5月29日および6月15日にそれぞれ新梢の摘心と花穂切除処理を行った。ブドウの開花、着色、収穫の生育ステージを迎えた日、各生育ステージ間の日数と気温、果実成分含有量およびワイン品質に及ぼす影響を無処理の対照区を含めて比較解析した。試験したすべての新梢摘心と花穂切除処理においてブドウ果実が収穫されたが、処理時期が遅いほど生育が遅れて推移し、成熟期間の気温も低くなった。成熟期間の気温が低くなることで、有機酸および果皮アントシアニン含有量、ワインの色調と香気成分含有量において顕著な差異が認められた。 ②新梢摘心と花穂切除により誘導される副梢上の花穂形成に影響を及ぼす要因について、これまでのMBAおよびメルロにおける研究から得られた結果を基に解析した。副梢の花穂誘導はブドウ品種によって異なり、新梢摘心と花穂切除処理方法も大きく影響を及ぼす可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MBAおよびCSの2品種を対象として、新梢摘心と花穂切除処理の時期がブドウの各生育ステージを迎えた時期、各生育ステージ間の日数と気温、果実成分含有量およびワイン品質に及ぼす影響を比較解析できた。さらに、これまでのMBAおよびメルロにおける研究から得られた結果を基に、新梢摘心と花穂切除により誘導される副梢上の花穂形成に影響を及ぼす要因について解析が進められており、当初の予定したとおり研究が実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
ブドウの新梢摘心および花穂切除処理の時期がブドウの生育・成熟期と各生育ステージ間の日数と気温、果実成分含有量およびワイン品質に及ぼす影響については、CSおよびMBAを供試して同様の試験を繰り返して実施し、年毎の気象変化の影響を含めた解析を行う。また、新梢摘心と花穂切除により誘導される副梢上の花穂形成に影響を及ぼす要因については、これまでに副梢上の花穂誘導が極めて乏しいことが経験的に明らかになっている甲州種を含めて、新梢摘心と花穂切除処理方法などについて検討を行う。さらに、副梢栽培ではブドウの果粒が小さくなり、収穫量が70%程度に減少することが課題であった。そこで、副梢栽培において容易に収穫量を増加するために、副梢の数を1.5~2倍程度にする整枝方法を新たに考案して収量増加に対する効果を検証する。また、収穫量の増加に伴う糖度、有機酸、果皮アントシアニンなどの果実成分含有量に対する影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に購入予定の超低温冷凍庫は、学内の研究室移転計画の遅れに伴って次年度に延期することとした。次年度の活動の中で実施する予定である。
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