気候変動による温暖化への適応方法の一つとして期待されるブドウの副梢栽培において、新梢と花穂の切除時期を調節して収穫を望む時期に遅らせ、ブドウの成分含有量をコントロールする新たな計画栽培モデルの構築を目的とした。研究期間を通じて、以下のことを明らかにした。 ①マスカット・ベーリーA(MBA)およびカベルネ・ソーヴィニヨン(CS)を対象に、新梢と花穂の切除を5月上旬~中旬に行う5月処理区と6月上旬~中旬に行う6月処理区を設定して生育・成熟時期と気象、ブドウ果実品質およびワイン品質に及ぼす影響を複数年にわたり調査した。MBAおよびCSの慣行栽培と比較したブドウの開花、着色、収穫は5月処理区が約1ヶ月,6月処理区が約1.5ヶ月遅れて経過した。生育が遅れて進むことで、着色から収穫の成熟期間の気温が著しく低下し、ブドウの成分含有量およびワイン品質には試験区間で明らかな差異が生じた。なお、同一試験区内における年ごとの成熟期間の気温、ブドウの成分含有量およびワイン品質の変動幅は比較的小さかった。このことから、新梢と花穂の切除時期を調節して収穫を望む時期に遅らせ、ブドウ成分含有量およびワイン品質をコントロールする計画栽培が可能であることが示唆された。 ②新梢と花穂の切除により誘導される副梢上の花穂発生に影響を及ぼす要因についてMBA、メルロ、甲州種を対象に検討した。副梢上の花穂発生はブドウ品種と新梢の切除方法に影響を受けることが示された。 ③副梢栽培は収穫量が慣行栽培の70%程度に減少することが課題であり、収穫量を増やすための整枝方法を検討した。MBAおよびCSにおいて、副梢の数を1.5~2倍にして慣行栽培と同等の収穫量が得られた。この条件下においても、果実成分含有量に与える影響は小さく,副梢栽培による果実品質の向上効果が認められた。
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