研究課題/領域番号 |
20K06016
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
藤田 尚子 岡山大学, 環境生命科学研究科, 特任助教 (50646966)
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研究分担者 |
赤木 剛士 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (50611919)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 性表現 / 開花期 / 花寿命 / ヒロハノマンテマ / 黒穂菌 |
研究実績の概要 |
本研究では、Silene属植物における菌感染による花の表現型の変化に着目し、外的要因による重要花形質「性表現」「開花期」「寿命」の表現型変動の原因因子の特定および分子機構の解明を目指している。 1年目の本年度は、「性表現」と「開花期」を制御する候補因子を得るため、花器官分化のごく初期の花芽メリステムを解剖・サンプリングし、RNA-seq解析に供した。得られたRNA-seqデータから感染花特異的な発現変動遺伝子群を抽出し、候補因子を抽出した。 花の「寿命」(保存性)に関しては、多くの植物種で花弁老化にはエチレンが主導的な役割を果たしていることから、トランスクリプトーム解析に先行して、菌感染花におけるエチレン生成量と感受性を調査した。プロピレン処理により花弁のエチレン感受性を検証したところ、処理翌日には全ての花弁に萎れがみられたことから、エチレン感受性であることが示された。多くの植物でみられる受粉・受精の刺激によるエチレン生成量の上昇も観察され、未受粉の花は1週間程度の花寿命を保持するのに対し、受粉後の花では翌日に花弁の萎れが確認された。一方、菌感染花においては、プロピレン処理下においても寿命が1日程度延びたことから、菌感染がエチレン感受性を抑制することが示唆された。さらに、健全花において花弁の萎れがみられる直前に観察されるエチレン生成量の上昇ピークが菌感染花には確認されず、菌感染花の寿命は健全花に比べて有意に延びることが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.花器官分化のごく初期の花芽メリステムのトランスクリプトーム解析から「性表現」と「開花期」制御候補因子を得た 2.菌感染花は花寿命が延びることを見出し、これがエチレン感受性および生成量に関係することを明らかにした
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今後の研究の推進方策 |
候補因子から目的因子を絞り込むため、k-merカタログ化による2形質間での塩基多型網羅法(Akagi et al. 2014 Science)を行い、同時に花の性表現について多様な影響を持つマンテマ属他系統群のゲノムリシークエンス解析により、多型ノイズ・非直接的影響因子のフィルタリングを行う。これら候補因子について花形成初期と開花後ステージ間で比較し、各ステージで特異的に発現する遺伝子を検出し、菌の性・寿命・開花に作用する原因因子を特定する。
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