2020年4月27日に実施した花芽数調査では、旧葉に対する花芽数が表(南側)、裏(北側)ともにGA濃度が高くなるにつれて減少していた。また、表側の方が裏側よりもGA濃度の増加に伴う花芽数の相対的減少が大きくみられた。枝中に含まれるアミノ酸含量は12月より2月、3月の方が高く、糖含量は 12月より2月、3月の方が減少していた。しかし、いずれにしてもGA処理によるアミノ酸・糖の大きな変化はみられなかった。 RNAseq解析の結果、5%FDRでコントロールと比較しGA処理の枝で発現に有意差がある遺伝子が91個見つかった。その中でも39遺伝子が有意に発現上昇し、52遺伝子が有意に発現減少した。発現上昇遺伝子の中にはPEBファミリータンパク質をコードする遺伝子や植物ホルモン応答性遺伝子等が確認された。一方、発現が減少していた遺伝子の中には糖の代謝関連酵素遺伝子等が確認された。 2022年度は、ジベレリン散布によって発現上昇した遺伝子であるMOTHER OF FT AND TFL1(MFT)について調査を行った。MFTは、植物の花成を含む形態形成に関わる遺伝子ファミリーであるTFL1/FTfamilyの1つである。シロイヌナズナでは遠赤色光条件下での種子発芽がABAおよびGAシグナル伝達経路の調節を通じて、MFTによって抑制されることが報告されている。これまでの実験でMFTがカンキツの種子に加え幼果で多く発現していることが確認された。シロイヌナズナを用いた形質転換実験では、CuMFTの過剰発現形質転換体において開花時期などの表現型に有意な差がみられなかった。シロイヌナズナmft変異体を用いた光感受性の観点から行った実験において、CuMFTはその欠損を相補した。MFTはカンキツで花芽形成に直接的な影響を与えず、胚珠の発達や種子の発芽に関係した機能を有している可能性のあることが示唆された。
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