令和3年度,ガンマ線照射花粉による偽受精胚珠培養おいて,ガンマ線の照射線量および胚珠培養開始時期の検討を行った.その結果として,照射線量別に行った500Gy処理区において半数性のカルスを獲得することに成功した.より多くの半数体を獲得するために,同様の条件である‘晩白柚’に500Gy処理を行った‘河野ナツダイダイ’を交配したところ,カルスは得られたもの,半数体は獲得できなかった.令和3年度に得られた半数性カルスからの植物体再生についていくつかの培養条件(IAA:オーキシンおよびBA:サイトカニンの異なる植物成長調節物質条件)について検討したところ,増殖はするものの植物体再生には至らなかった. そこで,半数性カルスの倍数性と単為発生に関わる第6連鎖群の3対のプライマー近傍の対立遺伝子の維持について解析した。フローサイトメトリー解析の結果,半数性が維持されていることが明らかとなった。また、半数性カルスは第6連鎖群のセントロメア付近のSSRマーカーを維持していた。 本研究では,第一の目的として,‘晩白柚’においては試みられていないガンマ線照射花粉の受粉による偽受精胚珠培養による半数体の獲得,そして第二にカンキツ半数体発生メカニズムに関する基礎的な知見を得ることとして,パラフィン切片法による置床時の胚の状態を調査した.その結果として,実験1の照射線量別に行った培養では,500Gyにおいて半数性のカルスを獲得することに成功した.実験2において,交配40日,60日および80日後に培養を開始し,培養の4ヶ月以内では半数体を確認することができなかったが,実験1の交配40日後では半数性カルスを獲得したこと,軟X線照射花粉の偽受精胚珠培養において交配40日後が最も半数性胚様体を獲得しやすい報告があること(Yahataら,2010)などから,胚珠培養開始時期は交配40日後が適切であると考える.
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