ダリアの日持ち性向上を目標とした交雑育種を行った。日持ち性による選抜と交雑を4回繰り返した第5世代の平均日持ち日数は8.0日であり、第4世代に比較して有意な日持ち性向上が認められ、日持ち性の育種効果は第5世代まで継続した。第4世代から蒸留水で14日以上の優れた日持ち日数を示す超長命性系統003-15が得られ、さらに、第5世代選抜系統115-20の品種化を検討中である。第5世代選抜系統間の交雑では種子稔性が低下し、得られた第6世代種子66粒を2022年春、2023年春に播種したが、発芽率は低く、その開花実生は8実生のみであった。ダリアは自家不和合性を有することから、世代が進むにつれて遺伝的に近交となり、近交弱勢により種子稔性が低下し、第6世代以降の後代獲得が困難となった可能性がある。このダリア良日持ち性育種の律速を打開するため、今後は新たな育種素材を利用して超長命性ダリアの育成を継続する予定である。 2020年度から2022年度までの研究により、ダリアのNAC転写因子(NAC4-4、NAC6-2、NAC9-8)が花の老化の直前に発現上昇すること、その発現上昇の時期は良日持ち性品種では遅れることを明らかにした。さらに、これらNACの発現はエチレン処理によって促進し、1-MCP処理によって抑制されることから、NACはダリアの花の老化を制御する因子であることが推定された。そこで、ダリアにおけるNACの機能を明らかにすることを試みた。本年度は、NACの発現を抑制した遺伝子組換え体では、花弁の萎凋等の老化現象が抑制されるのかを検証するため、遺伝子組換え用ベクターの作成と無菌植物体の作出を進めた。遺伝子組換え用ベクターは、NAC6-2の部分長配列をRNAi用ベクターに導入することで作成した。無菌植物体は、‘かまくら’で茎頂培養を行うことで30個体以上の個体を得た。
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