研究実績の概要 |
シソ科植物の混植による植物成長促進機構については科学的に明らかにされていない点が多い。本研究では、シソ科植物の混植による植物成長促進機構について、1次・2次代謝成分変動解析を主体とした検討を行った。 トマト( ‘桃太郎8’)をモデル植物とし、シソ科ハーブ5種(バジル,レモンバーム,セージ,ペパーミント,ヒソップ)を滅菌育苗土(生物因子を排除)を用いて個別ポットで1:1、1:4、1:8の割合で混植(メッシュによる根域隔離区も設定)した。1:1混植区において、バジル、ペパーミント、ヒソップ混植区のトマト地上部乾物重と、セージ、ヒソップ混植区のトマト地下部乾物重が単独区に比べ有意に増加した。これらのことから、トマトの成長促進効果には根の接触刺激といった物理的因子は関連しておらず、滅菌育苗土使用により生物的因子は除外され、ハーブ由来の植物代謝成分といった化学的要因が関連していると考えられた。続いて、1:1混植区のバジル、ペパーミント、ヒソップ、トマトにおいて2次代謝成分のメタボローム解析をLC-MS(UPLC-MS/MS)により行った。その結果、単独区と比較してハーブ処理区では根・茎・葉全ての部位において数種二次代謝成分増大がみられた。また、供試したハーブ間で混植により増大した共通成分が確認された。一方、一次代謝成分である遊離アミノ酸含量は、トマトの1:1混植区において、茎では大部分のアミノ酸で増加し、葉ではヒスチジン、GABA、バリンなどの一部アミノ酸において増加がみられた。以上のことから、数種ハーブの混植によりトマトの成長促進効果が確認され、バジル以外のシソ科ハーブによっても同様の効果がみられることが明らかとなった。一方、混植による成長促進効果には、化学的因子として植物代謝成分である数種二次代謝成分および一次代謝成分である遊離アミノ酸の増大が関連していることが示唆された。
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