キクは高次倍数性であり、自家不和合性が強いため特定の形質を目指した計画的な交配育種は困難である。そのため、ゲノム編集が既存品種を改良する新たな育種技術として期待されている。キクはゲノム編集を実施可能であるが、ゲノムが大きく標的遺伝子が多数存在しており、形質改変された個体を獲得できる効率は低い。多数の標的遺伝子に変異を入れるには、より強い遺伝子発現を可能にするプロモーター等の利用が考えられるが、キクでの知見は限られていた。そこで本研究ではキクの形質転換・ゲノム編集時の遺伝子発現情報を取得し、その情報を元にシュート形成期のゲノム改変を推進するプロモーター等の各要素を取得し検討することで、キクのゲノム編集効率を上昇させることを目的としていた。 キクの形質転換に用いる植物材料は、無菌操作によって継代することで維持している。1年目はコロナウイルス感染拡大の影響を受けたため、研究材料の維持以外に研究を進めることができなかった。2年目も影響が続き、培養やゲノム編集等の研究室において調整に時間のかかる研究を進めることができなかった。そこで、ゲノム編集実験の材料に用いるキクの葉の転写物配列情報を拡充し、それを用いて以降の研究に用いることにした。解析に必要な材料の調整を進める間に研究代表者の科研費補助事業受給資格が無くなり、研究課題廃止となった。 今後は研究期間中に用意した材料についての解析を進めることにより、キクの葉の転写物配列の拡充についての報告を目指す。
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