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2021 年度 実施状況報告書

モモ果皮着色の分子機構と品種多様性の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K06044
研究機関岡山県農林水産総合センター生物科学研究所

研究代表者

小田 賢司  岡山県農林水産総合センター生物科学研究所, その他部局等, 総括研究員 (10344409)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードモモ / アントシアニン欠損 / 品種間差 / 白花 / 絞り咲き
研究実績の概要

モモは、通常、果皮や花弁に組織特異的に天然赤色色素アントシアニンが蓄積し赤色を呈するが、その機構や品種間差については不明な点が多い。昨年度の本研究課題で、アントシアニンを欠損し白色の花をつける品種に着目し、その原因を調査したところ、4種類の原因変異が見出されたが、それらはいずれもアントシアニンの液胞輸送への関わりが指摘されるグルタチオンS-トランスフェラーゼ遺伝子(GST)の機能欠損変異であった。一方、モモの中には、花弁の多くの部分が白色であるものの一部が赤い絞り咲き(源平咲き)と呼ばれる花をつける品種が存在する。このような品種で白色の形質が現れる原因を調査したところ、アントシアニンを欠損する白花品種の一部に見出される変異が、絞り咲きの品種からも検出された。この変異はトランスポゾン挿入変異であるが、絞り咲き品種の花弁の赤色部分の組織片からはトランスポゾン挿入変異をもたないGST遺伝子のシグナルが検出された。また、絞り咲き品種の花弁の白色部分の組織片から、トランスポゾンが離脱したものの遺伝子機能を失うようなフットプリントを残した遺伝子も検出された。これらのことから、絞り咲き品種では挿入トランスポゾンの離脱が起こっていると考えられる。すなわち、トランスポゾン挿入変異を維持している細胞はGST遺伝子の機能がなく白色になり、挿入トランスポゾンが離脱してGST遺伝子が正常型に復帰した細胞では赤色になると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和2年度は新型コロナウイルス蔓延により出張が制限され、いろいろな花モモ品種のサンプリングに支障をきたしたが、令和3年度は出張制限がほとんど解除され、研究の大きな妨げにはならなかった。一方、半導体不足と相まって、実験用の試薬、キット類、消耗品、機器類の納品が遅れることが多く、研究推進の足かせとなった。そのような状況で一部の研究は停滞が認められるものの、令和2年度の白花モモの解析成果を踏まえ、令和3年度は絞り咲きモモの遺伝子解析に取り組んで重要な知見を得ることができ、全体的には順調に推移していると考えている。

今後の研究の推進方策

モモの果皮や花弁が赤くなる現象について、その機構や品種間差の解析に取り組んでいるが、品種間差解析で進展があり、最終年度は主にこちらの解析について実験を進める。これまでの研究成果にはまだ推論部分があり、同じトランスポゾン挿入変異が白花と絞り花を作り出す違いなどさらに解析が必要な点もある。また、バックグランドの高い実験結果もある。そこで、実験系のブラッシュアップなどを通して、データが不足している部分を詰めて、クリアな研究成果が得られるように努め、学会や論文での公表に進めたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス蔓延によるロックダウンや半導体不足により、一部の研究消耗品や備品の入手に時間が掛かり、一部は翌年度に購入せざるを得ないことになった。これらの事由により、研究費の一部を使用できなかったが、繰り越し分は来年度に研究消耗品や備品を購入し、実験に使用する予定である。

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公開日: 2022-12-28  

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