本研究は緑肥を利用した旧来の生物的防除技術と緑肥に定着能を有する拮抗細菌を組み合わせることで、利用する生産者も取り組みやすく、効果的でかつ広大な農地でも使用可能な防除技術の開発に取り組むものである。本研究では、緑肥作物として一般に利用されるソルガムを使用し、トマトとその土壌病害をモデルとして防除系を確立することを目的としている。22年度は前年度までに得られたBacillus属細菌のうち、トマト青枯病菌に対して強い抗菌活性を示す菌株1株ならびに、ソルガム根に高い定着能を有する3菌株を選抜し、ソルガム根における定着性を緑肥としての栽培期間となる2ヶ月間に渡って調査した。その結果、全ての菌株で栽培2か月後のソルガム根においても接種2週間後と同様に定着・増殖していることが確認された。次に、各菌株が定着・増殖したソルガム根を用いて、ポット試験による青枯病抑制効果を調査した。すなわち、滅菌培養土にトマト青枯病菌を接種して汚染土を調整し、これに拮抗細菌を含むソルガム根を細断して埋設混和した。これをソルガムの腐熟期間となる1ヵ月28℃で維持した後にトマト苗を移植し、4週間後までの発病抑制効果を調査した。その結果、4菌株の内1菌株を定着させたソルガム根で青枯病に対する抑制効果が確認された。さらに、汚染土における青枯病菌の菌密度の低下とBacillus属細菌の増殖が明らかとなった。これらのことから、本菌をソルガムを介して土壌に導入することで青枯病の発病を抑制する効率的な防除が可能になると考える。
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