研究課題
植物ウイルスによる病害は、有効な防除農薬がなく、一部の作物ではウイルス抵抗性品種の育成が成功しているものもあるが、大部分は感染植物の廃棄、媒介昆虫の駆除が主な防除法である。近年のゲノム解析等の進歩によって、ウイルス感染から病徴発現に至る過程の一部が解明されつつあるが、ウイルス遺伝子産物とそれを認識する植物側の因子の探索は未知の部分が多い。本研究ではラッカセイの矮化病に焦点を当て、ラッカセイ矮化ウイルス(PSV)感染によりラッカセイが矮化する病徴を材料として、ウイルス側の因子と植物側の因子を特定し、同定されたラッカセイの因子と相同な働きをする、ラッカセイと近縁のマメ科植物因子をラッカセイへ導入することで、PSV感染時に矮化しないラッカセイを作出することを目的とする。昨年度までに、PSV側の因子が外被タンパク質(CP)であることを明らかにし、CPを酵母ツーハイブリッド法に用いるプラスミドへのクローニングを行った。今年度は、精度の高いスクリーニングをするために、CPの変異株を作製し、ラッカセイへの感染によって矮化させる領域を狭めることを行った。また、多くのラッカセイ品種からのライブラリーを作成するために、新たに5品種を購入し、自家採種によってライブラリー作成のための材料を確保した。さらに、ササゲはPSVによって矮化しないことを明らかとした。これらのベイトとなるCPとスクリーニングに用いるラッカセイから、CPと相互作用するラッカセイ因子の特定を行う。
3: やや遅れている
コロナ禍により、研究が制限される期間があったため、本研究で最も困難で時間のかかる酵母ツーハイブリッド法によるスクリーニングが予定通りには進んでいない。一方で、ラッカセイ品種の確保やササゲが矮化しないことの検定等、最終年に向けての準備は進んだと言える。
計画の当初の目的までは達成が難しいことが予想されるが、第一段階である酵母ツーハイブリッド法でのスクリーニングによるラッカセイの因子の特定は可能と思われる。当初は1品種でのみ実施する予定であったが、複数品種でスクリーニングを実施すれば、擬陽性などが排除でき、精度が高い因子の同定ができることが期待される。
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JOURNAL OF GENERAL PLANT PATHOLOGY
巻: 87 ページ: 366-376