植物ウイルスによる病害は、有効な防除農薬がなく、一部の作物ではウイルス抵抗性品種の育成が成功しているものもあるが、大部分は感染植物の廃棄、媒介昆虫の駆除が主な防除法である。近年のゲノム解析等の進歩によって、ウイルス感染から病徴発現に至る過程の一部が解明されつつあるが、ウイルス遺伝子産物とそれを認識する植物側の因子の探索は未知の部分が多い。 本研究ではラッカセイの矮化病に焦点を当て、ラッカセイ矮化ウイルス(PSV)感染によりラッカセイが矮化する病徴を材料として、ウイルス側の因子と植物側の因子を特定し、同定されたラッカセイの因子と相同な働きをする、ラッカセイと近縁のマメ科植物因子をラッカセイへ導入することで、PSV感染時に矮化しないラッカセイを作出することを目的とした。 昨年度までに、PSV側の因子が外被タンパク質(CP)であることを明らかにし、CPを酵母ツーハイブリッド法に用いるプラスミドへのクローニングを行った。 最終年度は、矮化症状が最も激しいラッカセイ品種StarrからcDNAライブラリーを作成し、矮化を誘導するPSV-P1系統のCPと相互作用する因子を探索するため、酵母ツーハイブリッド法によって栄養要求性培地でのスクリーニングをした。 その結果、陽性クローンが70個ほど得られた。現在、その塩基配列を解析中である。新型コロナウイルスによる担当学生の体調不良や研究制限等の影響が排除できず、残念ながら因子を特定までは至らなかったが、前年度までに矮化を誘導しないPSV-J2系統のCPもbait用プラスミドのクローニング済みであり、今後のスクリーニングに利用可能であり、さらなる成果が期待される。
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