アブラナ科炭疽病菌は、農業上重要な品目を多く含むアブラナ科野菜に特異的に感染し、炭疽病を引き起こす病原糸状菌である。本研究では、アブラナ科炭疽病の抵抗性品種を新規に同定し、これらがどのように病原菌に対して抵抗性を発揮するのかを明らかにすることで、炭疽病菌の病原性進化およびアブラナ科野菜類の抵抗性進化について学術的な知見を得ること、さらに品種が持つ抵抗性遺伝子(座)を同定し、炭疽病抵抗性育種に応用することを目的とした。 これまでに、アブラナ科炭疽病に抵抗性を示すBrassica rapa品種を複数同定した。そのうち、2品種において感受性品種との交雑後代を用いて、抵抗性遺伝子領域の特定を試みた。その結果、1品種からからは、染色体の一か所に統計的に有意な染色体領域を見出した。しかしながら、もう一方の品種では、統計的に優位なピークを示す染色体領域の特定には至らなかった。見出した抵抗性品種のいくつかに関しては、種苗会社と連携し育成品種への抵抗性育種を開始している。 B. rapaの遺伝子機能解析を行うために、B. rapaにおけるタンパク質の一過的発現法の確立を試みた。GFPを発現するベクターをアグロバクテリウムに導入し、B. rapaの葉に注入し、GFPの発現がコンスタントに表れる条件を調べた。今後、この技術を利用して、候補遺伝子の抵抗性への関与を明らかにする。 これまで、アブラナ科炭疽病菌の病原性の分化やレースについての詳細は全く不明であった。そこで、異なるアブラナ科炭疽病菌分離株を複数取得し、B. rapaの288品種に接種試験を行った。その結果、ある品種に対して菌株間で感染性が異なることが判明した。今後、これら菌株間の感染特異性の詳細を明らかにする。
|