研究課題/領域番号 |
20K06056
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
薦田 優香 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (90716482)
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研究分担者 |
中原 健二 北海道大学, 農学研究院, 講師 (90315606)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ダイズ矮化ウイルス / minor CP / 機械的接種法 |
研究実績の概要 |
本研究では、北日本のダイズ圃場に慢性的に発生するダイズ矮化病の原因とされる、ダイズ矮化ウイルス(Soybean dwarf virus, SbDV)の増殖機構の解明を目指している。ウイルス増殖機構の解明には、感染性cDNAクローンの作出と機械的接種法の確立が求められる。本年度は昨年度に引き続き、SbDVの機械的接種法確立のための条件検討を進めた。SbDVの感染性cDNAクローンからSbDV RNAを試験管内合成し、これを接種源とした。発芽後間もないダイズおよびエンドウの芽生えに、微細なワイヤ-を用いてRNAを接種したところ、いずれの宿主植物においても、50%以上の効率で感染させることに成功した。そこで本接種法を利用し、SbDVがコードする遺伝子の機能についてのさらなる解析を進めた。 SbDVには2種類の外被タンパク質(CP、minor CP)が存在する。CP翻訳時に終止コドンのリードスルーが起こることで、CPのN末端側にリードスルードメイン(RTD)が付加された形のminor CPが合成される。これまでに、minor CPに存在するRTDの機能として、アブラムシの媒介に関与する可能性が示唆されている。一方、RTDの植物体内における機能は未知である。そこで本研究では、RTDがウイルスの細胞間移行に重要かどうかについて解析を行った。RTDの翻訳が起こらないようCPの終止コドン位置に複数の終止コドンを挿入したSbDV cDNAを構築した。この変異SbDVのゲノムRNAを、上記機械的接種法を用いてダイズおよびエンドウの芽生えに接種した。その結果、変異SbDVは野生型SbDVと同程度の全身感染効率を示した。すなわち、SbDVのRTDはウイルスの細胞間移行および長距離移行に必須ではないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SbDVの機械的接種法の確立において、高い感染効率を得るための条件検討に時間を要したため、植物体を用いたSbDVの逆遺伝学的解析への着手がやや遅れた。また、ダイズのプロトプラストトランスフェクション実験系の確立が難航している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画にしたがい、以下の研究を遂行する。 1)レポーター遺伝子を付加したSbDVの構築を行い、植物体内でのSbDVの動態や局在を解析する。 2)ダイズのプロトプラストトランスフェクション実験が難航し計画通り進んでいないことから、既に確立済みであるエンドウプロトプラストを用いた実験系に切り替え、SbDVの増殖に関わる宿主因子の探索に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度もコロナ禍が続き、研究活動に費やせる時間が制限され研究に遅れが生じたため、研究費の繰り越しが必要となった。今後の使用計画としては、SbDVゲノムに様々な変異を導入し、それらを用いた逆遺伝学的解析を植物体レベルで行う。またレポーター付加ウイルスの構築を行う。
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