研究課題/領域番号 |
20K06058
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
出崎 能丈 東京理科大学, 基礎工学部生物工学科, 助教 (80711647)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | HAMP / エリシター / 植物免疫 / ナミハダニ |
研究実績の概要 |
本研究課題では我々が同定したナミハダニ由来のHAMPであり、植物に防御応答を誘導するテトラニン(Tet2)の受容体ならびにシグナル伝達活性化機構を明らかとすることを目的としている。 本年度は、まずTet2タンパク質中の活性エピトープペプチドの同定を目指し研究を進めた。研究を加速するために、当初計画した大腸菌発現系を用いたタンパク質調製を用いた防御応答関連遺伝子発現誘導を指標とした解析を取りやめた。その代わりにTet2同定のきっかけとなったインゲンマメとアグロインフィルトレーション法を用いた評価系を利用した。変更後の方法ではタンパク質調製のステップを省略でき、複数の候補を短時間で評価することができた。Tet2は200残基程度のタンパク質であるが、これを100残基程度に分割して発現するベクターを構築し、インゲンマメにアグロインフィルトレーション法で発現させ、その葉上でのナミハダニの致死率を指標に評価した結果、Tet2の前半部分に活性があると示唆する結果を得た。 また、Tet2の受容体スクリーニングに関しては、当初の計画どおりシロイヌナズナ受容体様キナーゼ変異体ライブラリーを用い、これにTet2を処理した際の防御応答遺伝子の発現誘導の低下を指標に実施した。その結果、4つの候補遺伝子を得ることができた。またこの結果を裏付けるためにリソースセンターから別アリルの変異体を入手し、ホモ個体を得るに至っている。さらに、過剰発現体および相補個体の作出を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
活性エピトープの同定に関しては当初の大腸菌での調製からインゲンマメを用いた評価系へと変更したが、結果として当初の予定どおりの結果を得ている。 また受容体の同定に関しては、計画どおりスクリーニングを行い複数の候補を得て、さらにその実証の為の準備を着実に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
Tet2活性エピトープの絞り込みは進んでおり、今後はアルファヘリックス、ベータシートといった2次構造レベルの情報をもとに、より詳細な分析を進めていく。複数の候補を扱うにはインゲンマメの実験系の方が効率が良いことから、今後も絞り込みはインゲンマメを用いて行っていく。 受容体候補に関しては複数アリルでの評価を進め、確証を得る必要がある。その上で、他の防御応答に与える影響を評価して行く。そして、受容体であるかの有無としては細胞外ドメインでのTet2との結合の評価が必須であるが、これは小麦胚芽無細胞発現系とアルファスクリーニングシステムを用いることで解析を行う予定である。 過去のテトラニン同定時の結果を精査した結果から、すでに同定したTet1およびTet2だけではナミハダニに対して植物が誘導する防御応答を完全には再現できないことが見出された。このことから、Tet1およびTet2以外の更なるHAMPが存在すると考えられ、ナミハダニの唾液腺から分泌されているタンパク質を候補として、更なるHAMPの同定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の蔓延によって計画していた学会出張の延期を行った為。また、年度末および年度初めに必要となる試薬・消耗品が想定された為、その購入予算として一部の執行を遅らせた為。
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