研究課題/領域番号 |
20K06059
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
浴野 圭輔 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (30310030)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Bacillus thuringiensis / 抗菌タンパク質 |
研究実績の概要 |
Bacillus thuringiensis(BT)は菌体内に顕微鏡で観察できるほどのタンパク質のかたまり(結晶性タンパク質)を形成する。BTの中には、この結晶性タンパク質中に殺虫タンパク質を生成する多種多様な菌株が存在し、これまで微生物殺虫剤として基礎研究から、実用化に至るまでさまざまな研究が行われてきた。一方で、BTを含むBacillus属細菌は、放線菌同様さまざま二次代謝産物を生産することがわかってきた。実際、バイオスティミュラント(植物のダメージを軽減し、健全な植物を提供する)資材として実用化されているB.velezensis FZB42は、多種の2次代謝産物を生産し、植物病原菌を防除する働きも示す。 じゃがいもの植物病のひとつであるそうか病は、病原菌であるStreptomyces scabiesによって引き起こされる。BT A297株は本病原菌に対して抗菌活性を示すことから、その抗菌性を明らかにすることを目的とした。 A297株の培養上清から、そうか病菌に対する抗菌活性を指標に抗菌タンパク質の精製を行った。CM Sepharose Fast Flow、TSKgel CM-5PWのカラムクロマトグラフィーにより精製標品を得ることができた。アミノ酸シークエンサーによるN末端配列を解析し、13から16アミノ酸残基の配列を明らかにした。 一方で、受託解析によるPacBio シーケンスによってA297株のゲノム配列を明らかにした。その結果、精製した抗菌タンパク質はゲノム上の遺伝子297_1_00824および 297_1_03861のものと一致した。これら遺伝子配列の相同性検索を行った結果、機能が明らかな配列と一致するものはなく、機能未知タンパク質の新しい機能が明らかとなったことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
そうか病菌に抗菌活性を示すBT A297株からその活性に起因するタンパク質をカラムクロマトグラフィーを用いて、精製することができた。また、A297株のゲノム配列を明らかにした。抗菌タンパク質の精製標品のアミノ酸配列情報をもとに、A297株のゲノム配列から一次構造を明らかにした。相同性検索を行った結果、本研究で明らかにした抗菌タンパク質の遺伝子は多くのBacillus属細菌に普通に存在するもののその機能は明らかになっていないhypothetical proteinであった。つまり、これまで知られている抗菌タンパク質に該当するものはなく、新規性の高いタンパク質であることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
本抗菌タンパク質は菌体外に分泌されるためのシグナル配列を含み、プロセシングによって成熟タンパク質をとして機能するプレプロタンパク質である。以降の機能解析を行うことを目的にまずは大腸菌による異種タンパク質発現系の構築を行う。大腸菌による発現系は、まず、これまで使用経験があるpETベクター系による発現系を構築する。また、コールドショックベクター系も使用可能な状況にある。さらに、近縁種であるB.subtilisあるいはBrevibacillusの発現系を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度当初コロナウイルス感染症流行の対応のため、思うように研究課題に取り組むことができず、予定していたほど試薬、消耗品の使用をすることがなかった。次年度使用額と合わせて試薬、プラスチック製品の消耗品を主として使用する予定である。
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