昨年度までにジャガイモそうか病菌に対する新規抗菌タンパク質2種類(AMP24、AMP28)をBacillus thuringiensis A297株から分離した。大腸菌による異種タンパクの発現系を構築したが、発現量が非常に少ないことが明らかとなった。今年度は、この点を改善する目的で、大腸菌とは異なる宿主による発現系を検討した。AMP24はシグナル配列を含む構造遺伝子の全長をpHT254に挿入した発現プラスミドを構築し、B.subtilis 1012wtに導入することで菌体外に目的タンパク質を分泌発現することができた。一方、AMP24はシグナル配列を除いた成熟タンパク質に該当する遺伝子断片を、pBIC1にあらかじめ保持されているシグナル配列の下流に挿入した。構築した発現プラスミドをBreviabacillusに導入し、菌体外に目的タンパク質を分泌発現することを確認した。 これらの抗菌タンパク質の作用機構を解析することを目的に、細菌の生死判定などでよく用いられる膜損傷の有無を指標とした蛍光染色を行った。ジャガイモそうか病菌であるStreptomyces scabieis NBRC 13767をマルトースベネット液体培地で培養後、抗菌タンパク質で反応した。菌体をPBSで洗浄した後、Bacterial Viability Detection Kit - DAPI/PIで染色した。顕微鏡観察の結果、細胞膜損傷時において染色されるPIの蛍光が検出された。したがって、本研究課題で単離した抗菌タンパク質はジャガイモそうか病菌の細胞膜を損傷し、生育を阻害していることが示唆された。
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