研究課題/領域番号 |
20K06060
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研究機関 | 尚絅大学 |
研究代表者 |
光増 可奈子 尚絅大学, 生活科学部, 助教 (00711839)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生体アミン受容体 / 同定 / 機能解析 |
研究実績の概要 |
サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)の生体アミン受容体(BARs)候補配列の検索をさらに進め、7回膜貫通領域を含む配列を新たに14種類同定した。その中から、解析の主な標的であるTAR及びOARと予測され、全長cds配列が判明しているMinc02654について、発現培養細胞を作製し薬理機能を解析した。 HEK-293細胞に受容体様たんぱく質とGα15たんぱく質を一過的に共発現させ、エクオリンアッセイによってリガンドの応答性を確認したが、TAに対する応答は見られなかった。OA、DA、5-HTに対する応答も見られなかった。COS7細胞、CHO-K1細胞で同様に調べた結果、CHO-K1細胞を用いた時にTAへの応答が見られた。受容体様たんぱく質のCHO-K1安定発現細胞でも同様のアッセイを行った。Gα15たんぱく質を共発現させない場合にTA濃度依存的な応答が見られた。 これらの結果より、Minc02654たんぱく質はサツマイモネコブセンチュウのTA受容体であることが示唆された。また、モデル生物である線虫(Caenorhabditis elegans)由来の受容体Ser-2のアミノ酸配列は、Minc02654のアミノ酸配列と相同性が高く、下流のシグナル伝達系がcAMP抑制型であることがわかっている。そこで、Minc02654の場合もcAMP抑制を評価するアッセイ系を用いて、より詳細な薬理解析を行い、受容体の機能を評価する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
M. incognitaのチラミン受容体様たんぱく質の機能解析の段階で進捗が遅れている。これまでの研究実績から、まず手始めにHEK293培養細胞を用いてアッセイを行ったが、応答シグナルが微弱であり、リガンドを特定することができなかった。目的たんぱく質の発現量が少ないことが原因と考えている。この問題を克服するために、培養細胞の種類や培養条件について再検討を行ったところ、シグナルの増強傾向がみられたので、引き続きアッセイ条件の最適化を進めている。また、リガンド同定をより汎用性の高いアッセイ系で行うために、Gα15を共発現させたエクオリンアッセイを用いているが、より詳細に機能解析を行うためにcAMP抑制を検出するアッセイ系も新たに立ち上げ、条件を最適化する必要が出てきたため、進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに進行中のTARの機能解析を引き続き進め、薬剤スクリーニングと行動解析によって、有望な行動制御剤のリード化合物を見出す。また、新たに同定したM. incognitaのTAR、OAR配列について、同様にアッセイ系の構築を進める。これまで他の無脊椎動物種で主に用いてきたHEK293細胞のアッセイ系が、M. incognitaの配列に関してはあまり感度が高くなかった。このことから、別の培養細胞を用いたため条件検討等で遅れが出たが、一旦新規アッセイ系の条件が最適化できれば、未解析の配列に関しても迅速に解析できると考えている。 スクリーニング系は機能解析系と概ね同じ材料で実施できるため、まずは機能解析の系をしっかりと構築することで、スムーズなスクリーニング系構築へとつなげられる。 M. incognitaの行動解析等によるin vivo評価系の構築に関しては、異動先で新規に宿主植物育成システムの構築を進めてきた。現在宿主植物の順調な育成が可能となってきたので、M. incognitaの行動評価系のセットアップを行っていく。 以上の様に、進捗が遅れている行程を後ろ倒しにしてin vitro、及びin vivoスクリーニング系を構築する。その系を用いて多数の化合物をスクリーニングし、リード化合物の同定、活性の評価、作用機構の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
受容体たんぱく質の機能解析の段階で条件検討を行うべき項目が増えたため、機能解析がある程度進んでから実施する予定であった、化合物のスクリーニング系の構築及びセンチュウの行動解析に必要な経費の支出が後ろ倒しになったため。また、追加の機能解析を実施する際に必要な試薬やプラスチック製品等の入荷が、社会情勢が影響し遅れるなどしたため、その分の支出は次年度に持ち越しとなった。更に、研究機関間での往来等が制限されていた状況であり、旅費・交通費等の支出は無かったため。これについては、今後研究成果を発表する際に使用する計画である。
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