研究課題
研究実績の概要昨年度は、Bombyx mori nucleopolyhedrovirus(BmNPV)が感染した宿主細胞のミトコンドリアに局在するBmGP37を欠損した変異ウイルスBm52Dを構築し、GP37の欠損が培養細胞におけるBmNPVの感染増殖に有意な影響を及ぼさないことを明らかにした。そこで本年度は、まず、カイコ幼虫を用いたBm52Dの感染実験を行い、BmGP37の欠損がカイコ幼虫における半数致死濃度を大幅に低下させること、半数致死時間を延長させることを明らかにした。また、Bm52D感染幼虫の血中ウイルス封入対数が大幅に減少していたことから、半数致死時間の遅延には、体内組織・器官の崩壊があまり起こらなくなる事が原因と考えられた。また、Bm52Dでは、通常観察され得る斃死体の液状化が観察されないことも明らかとなった。組織化学的な観察を行った結果、Bm52Dの感染幼虫の表皮では、クチクラ層の分解・消失が引き起こされないことも明らかになった。そのため、BmGP37の機能を詳細に調査した結果、BmGP37がN型糖鎖を有し、ウイルス粒子の構造タンパク質となっていること、また、キチン結合能を有することを明らかにした。また、BmGP37は非分泌タンパク質であるものの、ウイルス感染末期の血中にウイルス粒子の構造タンパク質として存在する可能性示した。研究期間全体として、本研究では、宿主ミトコンドリアに存在するBmNPV由来タンパク質を同定することに成功した。得られたBmGP37は、当初の見込みのようなエネルギー代謝に直接関わるタンパク質ではなかったものの、新規のウイルス構造タンパク質であるだけでなく、バキュロウイルス感染の大きな特徴の一つである死後溶解に関わることを明らかにした。今後は、BmGP37がどのようなメカニズムでミトコンドリアに局在するのか、そして、BmGP37がどのようにクチクラの分解に関わるのか、キチナーゼやカテプシンとの共役について調査する予定である。
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Virus Genes
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10.1007/s11262-023-01983-3.