研究課題
in vitro精子成熟再現系における精しょうタンパク質の経時的な変化を,二次元電気泳動法により分析することで,複数種のタンパク質が分解されていることを確認した。そこで,PMFによりタンパク質の同定を試みたがほとんど情報は得られなかった。「オス生殖腺部位における発現遺伝子のデータベース」の必要性を再度認識した。しかし,一部についてはN末端を決定することが出来たので,その結果を踏まえ,精子成熟の進行に伴い分解される精しょうタンパク質として,7種類の対応する遺伝子の単離を完了させ,さらにその情報に基づき,ゲノム編集を施すことで,1種類のタンパク質遺伝子に対して複数のノックアウト(KO)系統を作成した。作成した系統のうち,互いに類似した一次構造を持ち,ゲノム上にタンデムに並ぶBmSfp49, BmSfp53, BmSfp54, BmSfp62をすべてノックアウトさせた2つのKO系統については,変異アレルホモ接合 (-/-) オスは,オス成虫生殖輸管の一部分,貯精のうにおける,4種タンパク質の特異的な合成は消失しており,交尾したメスは,未受精卵のみを僅かに産下した。また,-/-オスが射精した無核・有核精子には形態上の異常は認められなかった。一方,その他のKO系統では,変異アレルの状態に関係なく,無核・有核精子には形態上の異常は観察されず,さらに,元となる野生型系統と変わらず,そのオスは,メスと交尾し,同数の卵を産下させ,孵化率にも差が認められなかった。
3: やや遅れている
オス生殖腺部位における発現遺伝子のデータベース化については,新型コロナ感染症の影響で,外部との打ち合わせおよび利用が滞ったことがあり,最終的な作業・成果にまでは至らなかった。また,KO系統の作成についても,一時期,系統の維持確認ならびにキャラクタライゼーションが止まった影響で,その分の進行が停滞した。
昨年度の経験を元に,作成できたKO系統について,確実に維持できるような体制を確保する。オス不妊になることが確認された系統については,その原因を探り,そのタンパク質の機能に迫る。また,今のところ,大きな表現型が見出されなかった系統については,KOの影響が全くないのかを探るために,二重KO系統を作成すると共に,野生型オス精液との競争状況におかれたときの,影響を検討する。
新型コロナ感染症の影響で外部施設の利用等に制限が生じ,初年度に行う予定であったオス生殖腺部位における発現遺伝子のデータベース化の研究が進まず,必要な予算のほとんど執行されず次年度使用となった。準備自体は十分に進んでいるので,制限が緩和された時点で速やかに行えるような体制を確保する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
Journal of Insect Biotechnology and Sericology
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