研究課題/領域番号 |
20K06073
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
秋野 順治 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 教授 (40414875)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | キャロウ / 同巣認識 / 体表炭化水素組成 / 体表炭化水素組成比 / 同巣認識フェロモン |
研究実績の概要 |
コロナ対応のため、予定していた実験を夏前まで実施できなかったため、計画と比べて進行が遅れている。 試験対象としているクロヤマアリの新羽化成虫:キャロウを、羽化後日齢0日、1日、2日、3日、4日の5日間について、個体ごとに加工整形したプラスチック容器上に固定して、異巣および同巣の成熟働きアリと遭遇させる試験を実施した。その結果、羽化後4日齢のキャロウにおいて、遭遇したワーカーに対して示す行動応答が、その遭遇ワーカーの所属(同巣か異巣か)によって統計的に有意に異なるように変容することを明らかにした。一方遭遇したワーカーによるキャロウへの行動応答については、羽化後4日経過したキャロウに対しても顕著な攻撃的行動をしめすことはないことも判明した。反復数も15反復以上とれていることから、信頼性の高いデータと言える。この結果は、クロヤマアリのキャロウが巣への帰属を認識できるようになる「自我」の確立が、羽化後4日目にはかなり進行していることを示している一方、成熟ワーカーによるキャロウへの認識=「他我」の確立については、さらに時間を要することも示しており、その2つの形成時期にはずれがあることを示唆する結果となった。 同時に、羽化後日齢別にキャロウのCHC変容を分析・解析したところ、羽化直後と比べるとCHCの絶対量が顕著に増加することに加えて、その組成と組成比が変化することも明らかとなった。特に羽化直後のキャロウCHCは成熟ワーカーのCHCと組成が異なっており、化学感覚に従っても明瞭に見極めることが可能であることが示唆される。羽化後4日齢のキャロウCHCは、成熟ワーカーCHCとは、組成は同一になるものの組成比にはまだ違いが認められることから、今後は「他我」確立時期を詳細に探るとともに、その際のCHC組成比の検証をすすめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、大学での教育面においてコロナ感染症対策に準じた授業対応などをとらなければならず、実務時間の大半をそこにとられてしまったことが第一の要因である。また、同テーマを一緒に勧めて研究する大学院生が大学研究室にきて研究をおこなう機会についても、令和2年度に関しては夏前まで全面停止していたこともあり、時間にするとおおよそ半年間種々の検証実験がほぼ止まった状態となっていた。夏以降は研究室での研究活動は再開されたものの、対象とするアリの活動時期:特に繁殖時期は夏後半ぐらいまでで、その後は活動が低下するため、予定した試験計画よりは遅れをとることになってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
検証の結果は好ましいものであったことから、今後の方針としては、(1)反復数を増加させ結果における客観的信頼性を増すとともに、(2)羽化後日齢5日以降のキャロウに関しても、追加試験をおこなうことで、その同巣認識フェロモンとして機能する体表炭化水素組成比の推移を詳細に検証する。また、(3)世話役の成熟ワーカー不在条件下でのキャロウの成熟を可能にできるような養育体系を模索し、それによって人工的な化学訓化によってキャロウの「自我」形成に影響を与えるか否かを検証出来るシステム構築を目指す。加えて、(4)キャロウを人工的に別の巣内に同居させることで、異巣ワーカーによる養育下での同巣認識能の獲得に関する検証と、その際の体表炭化水素組成比の推移を検証するという項目を追加して実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該テーマに関わっている学生及び教員自身の学会参加のための旅費などを計上していたが、オンライン学会となったことから、実質旅費としての出費が見込みよりもかなり少なくなってしまった。また、コロナ対策の影響で学生等の援助を得ることも避けたため、人件費・謝金としての支出もゼロになってしまった。 現時点では、既に通知がある関連学会は令和3年度もオンライン学会開催の意向であること、また県外への出入りを見合わせるほうが良い傾向にあることから旅費支出は少なくなる見通しであるが、観察のための撮影データ量がかなり多くなっていることからデータ保存・整理をすすめるとともに、検定システムの構築、並びに、必要に応じて関連フェロモン成分の合成依頼(外部機関への委託)などをすすめる予定である。
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