日本で最普通種であるクロヤマアリは、他種アリ同様に高い巣仲間認識能力を有するが、本種においてその能力は、成虫羽化後の3~4日程度で獲得形成されることを、先行研究で明らかにしてきた。本研究では、その能力獲得期において、巣仲間と接する際の化学刺激受容が重要な鍵刺激として機能するという仮説をもとに、羽化直後の隔離個体に対し人為的に化学刺激を提示する試験区を設け、化学刺激提示なしで単独飼育し続けた場合、および通常通り周囲に世話役ワーカーが存在する状態で飼育した場合との間で、新羽化個体が示す行動を比較した。その結果、化学刺激提示区では世話役ワーカー存在区と同様に、巣仲間認識能の獲得が確認された。
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