抵抗性における「化学物質の蓄積」が耐虫性に寄与するか否かは不明瞭なままである。そのような中、申請者はジャスモン酸がスイートピーにハスモンヨトウ幼虫に対する抵抗性を誘導することを見出し、この抵抗性が摂食阻害物質に基づくことを確認し、昨年度までにその誘導性抵抗性因子が2-cyanoethyl-isoxazolin-5-one (2-CEIX)であることを確認した。さらに、これを直接ハスモンヨトウ幼虫に塗布すると致死活性を示すことも確認してきた。本年度は、この現象を利用して害虫防除技術開発のために、JAを用いた抵抗性誘導活性をより高く長期にわたり持続させることを目標に試験を実施した。 具体的にはJAの2-CEIX誘導活性への共力作用物質を探索するため、JAに各種植物ホルモンを混合して処理すると、JAとSAの混合液に共力作用が確認された。詳細な条件検討の結果、一定濃度のSAとJAが組み合わさることでSAはJAと共力的に働き、JA単独処理よりも2-CEIX蓄積量を増大させて強い抵抗性を誘導すると考えられた。さらにJAに代わってジャスモン酸メチルやプロヒロロキシジャスモンを用いても同様の効果が得られることも判明した。また2-CEIXの殺虫スペクトルを評価すると、今回用いた全ての農業害虫で2-CEIXの10000ppm水溶液にて70%以上の死亡率を見出した。従って2-CEIXがハスモンヨトウ幼虫以外の農業害虫にも致死効果があり2-CEIXは幅広い農業害虫への殺虫剤として開発が期待できると考えられた。 さらに、スイートピー以外のカスミソウ、パンジー、ナデシコ、クリスマスローズへの植物ホルモン処理ででもハスモンヨトウに対する摂食阻害活性の誘導を確認したことから、植物ホルモンによる害虫に対する抵抗性の誘導には普遍性があることを見出した。
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