研究課題/領域番号 |
20K06076
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
大庭 伸也 長崎大学, 教育学部, 准教授 (20638481)
|
研究分担者 |
東城 幸治 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (30377618)
鈴木 智也 京都大学, 地球環境学堂, 特定研究員 (30739503)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | paternal care / female choice / 卵サイズ |
研究実績の概要 |
本研究では、オスが単独で卵保護を行うコオイムシ科昆虫において、卵のサイズ変異がオスの卵保護行動やメスの配偶者選択に与える影響を明らかにする。コオイムシ科昆虫は、種間比較から卵の大型化がオスの卵保護の進化を促したと考えられている水生昆虫である。研究代表者は日本産コオイムシでは、同種内の卵サイズに個体群間変異があることに着目した。本研究では、コオイムシの卵サイズの異なる個体群ごとに1.卵の酸欠の程度、2.オスの卵保護やメスの配偶者選択に関する行動観察、3.分子マーカーを用いた父性解析(オスが背負う自分の仔の割合の調査)を行うことで、オスの卵保護の進化に関する新たな理論を構築することを目指す。令和3年度は以下の項目を調査した。 1.個体群ごとの卵の酸欠度合いに関する調査:卵サイズの異なる北海道、兵庫、鹿児島の3個体群を用いて、卵サイズを考慮して様々な水深にそれぞれの卵を設置したところ、予測通り卵サイズの大きい北海道、兵庫、鹿児島の順に酸欠になりやすいことが確かめられた。 2.オスの求愛とメスの配偶者選択の個体群間比較:コオイムシ科昆虫では、オスが中後脚で屈伸運動を行い、波を起こしてメスに対して求愛を行う。メスはオスの求愛行動から、そのオスの卵保護能力を査定していると推測されるが、それを明らかにした研究は皆無である。2年間かけて室内条件下でメスの配偶者選択を観察し、北海道~鹿児島の7個体群間で比較したところ、繁殖期の短い北の個体群ほどメスは多く求愛したオスを選択する一方、南の個体群ではその傾向は観察されなかった。 3.オスが保護している卵塊の父性の個体群間比較:令和3年度はサンプリングを実施できなかったが、本年度に東北、北海道など北日本集団のサンプルが揃い次第、解析に取り掛かる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの感染拡大により、東北・北海道地域の野外サンプルの収集ができなかったが、室内実験は順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
完了した項目から論文化しつつ、令和3年度にできなかった「3.オスが保護している卵塊の父性の個体群間比較」の北日本集団のサンプリングを行う。
|