現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、セイヨウミツバチとクロマルハナバチの社会性ハナバチ類2種を用いて研究を進めている。両種において、脳内ドーパミン量にカースト差があることを示すことができ、種間比較により、進化的にカースト分化の程度が進んでいると考えられるセイヨウミツバチでカースト差がクロマルハナバチよりも大きいことを明らかにした。また、ドーパミンの前駆物質でかつ幼虫期の餌に含まれていると考えられるチロシン量にもカースト差が見られることから、餌摂取(栄養摂取)が脳内ドーパミン量のカースト差を生む要因の一つであることを2種で示した。これらの成果は今後この研究課題を進める上で、非常に重要な発見であり、これらの知見を令和2年度の後半に論文として発表した(セイヨウミツバチ:Sasaki and Harada, 2020, PLoS ONE, vol. 15, e0244140; クロマルハナバチ:Sasaki et al., 2021, Scientific Reports, vol. 11, 5526)。さらに、クロマルハナバチにおいては、RNA-seq法の結果から、遺伝子の配列情報を得ることができ、qPCR法によるドーパミン関連遺伝子の発現量の調査やin situ hybridizationのプローブ作成が可能になり、今後の実験のための準備が順調に進んでいる。 セイヨウミツバチにおいては、変態期で脳内ドーパミン量のカースト差が生じる過程をすでに報告しているが、クロマルハナバチにおいては、まだ変態期の脳内ドーパミン量に関する調査がない。今後、この知見を得ることにより、変態期でのカースト差が生じる過程を両種で比較できるようになり、この実験についても着手している。 以上のことから、この課題は計画通り順調に進展していると言える。
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