最終年度である2022年度には、トゲアシヒメハナバチ雌の出巣時積載蜜量について、データ数の少なかった9-11時のデータを追加した。これにより、本種雌の出巣時積載蜜は、早朝には比較的多いが、その後の時間帯ではごく少量となることを確認した。また、本種雌の時間的採餌パターンについてのデータを追加し、他の採餌特性に関する結果と合わせて論文発表を行った(Harano 2023)。 ツツハナバチの出巣時積載蜜量の測定も、予備的ながら行った。その結果、営巣中のツツハナバチ雌も測定可能な量の蜜を出巣時に保持しており、訪花による花粉採餌飛行時に比べ、花からの燃料補給ができない粘土採集時の方が多くの蜜を持って出巣していることが示唆された。 また、蜂が採集した花粉から、DNAバーコーディング法によって花粉源植物を同定する方法について詳細な手順の検討を行い、種レベルでの同定を可能にする手順を見つけ出した。 研究期間全体を通じて、トゲアシヒメハナバチとツツハナバチについての燃料調節を調べたが、主な成果は、前者の種について得られた以下の知見である。1)本種雌はカントウタンポポを主な餌植物としている。2)本種雌は、カントウタンポポの開花直後から訪花し、昼前まで花粉を採集する。3)カントウタンポポは早朝の花蜜分泌量が少なく、本種雌は、早朝の採餌では花からの燃料補給が困難である。4)本種雌は、採餌期間の後半に集めた花蜜を全て花粉団子作成に使わずに、一部を蜜胃内に保持し、それを翌日早朝の燃料として用いている。5)早朝に燃料蜜を十分持つことは、花粉採餌を成功させるために重要である。
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