研究課題/領域番号 |
20K06080
|
研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
後藤 彩子 甲南大学, 理工学部, 准教授 (70734680)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | アリ / 精子貯蔵 / 繁殖戦略 |
研究実績の概要 |
社会性ハチ目昆虫では、女王は羽化後まもない時期にしか交尾しないため、この時に受け取った精子を体内の受精嚢の中に寿命が続く限り貯蔵する。本研究では、精子が貯蔵される微小空間である受精嚢リザーバー内の化学的な性質を調べた後、それらのどの因子が精子の生存に寄与するか、また、寄与するのであれば具体的に精子の生理状態にどのように影響しているかを明らかにすることで、アリ科女王の長期間の精子貯蔵メカニズムの解明を目指している。 本年度は、微量な受精嚢リザーバー内液をサンプリングする方法の確立に成功した。これをもとに、LC/MS解析によりリザーバー内液の各種アミノ酸や糖の分析をおこない、体液のそれと比較したことでリザーバー内液の物質の特徴を明らかにすることができた。 先行研究では、貯蔵中の精子は不動化されていることがわかっている(Gotoh and Furukawa, 2018)。本年度は、各種試薬や阻害剤を使用することで、精子の不動化に関与する要素をほぼ特定することができた。現在論文を執筆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度前期は新型コロナの蔓延による自宅待機や講義のオンライン化などにより、アリの飼育を継続するだけで実験は困難であった。
|
今後の研究の推進方策 |
先進ゲノム支援のご協力により、本研究でメインで用いているキイロシリアゲアリのゲノム解析を進める予定である。これを行うことで、RNA-seqにより特定した受精嚢特異的遺伝子(Gotoh et al., 2017)の全長配列を決定し、タンパク質を合成して精子と共培養することで精子への影響を調べる。 リザーバー内液の脂質組成などについても、測定方法を確立して調べていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ対応により、実験が困難な期間が多くあり、必要な試薬の購入や受託解析を見送ったために次年度使用額が生じた。この分の実験を次年度に行う予定である。
|