研究課題/領域番号 |
20K06082
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
高務 淳 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80399378)
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研究分担者 |
仲井 まどか 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60302907)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 昆虫ウイルス |
研究実績の概要 |
本課題の目的は、昆虫ポックスウイルスに随伴するゲノム外DNAエレメント(以下、エレメントと称す)が、ウイルスー宿主昆虫の動態に及ぼす影響を評価することが目的である。具体的には、エレメント有り/無しのウイルスが宿主昆虫へ与える影響を比較する。今年度は、エレメント有り/無しのチャノコカクモンハマキ昆虫ポックスウイルス(AhEV)を作成することである。野外のAhEV分離株のうち、エレメントを持っていないウイルスを純化したもの(AhEV-E(-))に、エレメントを付加することに成功した。次世代シーケンス解析によって、全ゲノム配列を解析し、エレメントを持っていないAhEV-E(-)の遺伝的特徴を解明した。このウイルスは、既に我々がゲノム解析したAhEV五日市株と99%以上の相同性をもち、また、エレメントをゲノムの内外に持っていないことも確認した。培養細胞に、エレメントを持つウイルス株と持っていないウイルス株を重感染後、クローニングすることにより、AhEV-E(-)株にエレメントを付加した株を得、目的を達成した。エレメントは2種類ある(E1およびE2)が、一種類のエレメントについては、AhEV-E(-)に付加しクローニング後、その後の解析のために増殖した。もう一種のエレメントについては、現在付加したウイルスをクローニング中である。また、エレメントを付加したAhEVについては、生物検定の予備試験を実行中である。さらに、今後の比較解析のために、ウイルスやエレメントの同定や定量のための手法が必要であるため、ウイルスの定量や同定等に必要な定性的および定量的PCR法のプライマーや反応条件を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標であったエレメントを持っていないAhEV-E(-)のゲノム解明および、AhEV-E(-)へのエレメント付加がほぼ達成できた。これにより、エレメント有り/無しの昆虫ポックスウイルスを用いた比較解析(宿主昆虫への病原力、ウイルス複製能等の比較)が可能になった。また、既に完成している一種類のエレメントを付加したAhEVについては、生物検定に供している。これらの成果によって、本課題の達成目標であるエレメントがウイルスー宿主への動態へ与える影響の解明に前進したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
もう一種類のエレメントを付加したAhEVを作成する。本格的に生物検定を行い、エレメント有り/無しのAhEVの病原力を比較する。また、これらウイルス接種後のウイルスの複製、寄生蜂などの多生物との相互作用について、定量的PCR法等を用いて解析する。さらに、野外において茶葉にウイルスを塗布し、その後の活性を調査する。野外実験により両ウイルスの宿主昆虫での広がり(宿主昆虫へのインパクト)を解析するとともに、シミュレーションモデルを動かし、エレメントがウイルスー宿主への動態へ与える影響を解析する。ただし、野外実験については、プロットを東京農工大に設定する予定だが、コロナ禍にあり、予定外かつ不規則な立ち入り制限等がこうじられる場合も想定しており、その場合には、室内実験である病原力や複製力、多生物との相互作用の解析をより詳細に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末のメーカーのキャンペーン等によって予想価格と購入価格との差が生じたため、10025円を繰り越すこととなった。規定に従い、適切に執行する予定である。
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